【記事】「一つの中国」 「政策」と「原則」の違い

「一つの中国」　「政策」と「原則」の違い

まず，アメリカの「一つの中国政策」と中国の「一つの中国原則」は別物であるのに，いくつもの記事が両者を混同させています。紙面では字数が制限されるので説明が簡略化されるのはやむを得ないですが，重要なことなので，歴史的経緯を踏まえた正確な報道が求められます。これは日本メディアに限らず，米メディア，台湾メディアでも長きにわたって発生している現象です。

中国の「一つの中国原則」とは，①「中国は一つである」　②「台湾は中国の不可分の一部である」　③「中華人民共和国は中国を代表する唯一の合法政府である」という三段論法です。1970年代，多くの国がこの原則を「承認」しました。日本は「理解し尊重する」，アメリカは「acknowledge（認知する）」です。

「中国大陸と台湾がともに一つの中国に属する」という言い方は比較的新しい用法で，これを最初に言ったのは江沢民時代の汪道涵だとされています。共産党の対台湾政策文書で広く使用されるようになったのは胡錦涛時代です。

アメリカの「一つの中国政策」は，①「1972年，78年，82年の3つの米中コミュニケ」（その中でアメリカは「中国の主張を認知し，この立場に異論を唱えない」と表明）　②「台湾関係法」　③レーガン大統領が台湾に対して表明した「6つの保証」から成り立ちます。ただし，③をどう位置付けるかは米国内でも議論があり，米の政治家，専門家で③に言及しない人もいます。

中国はそもそも「台湾関係法」にも「6つの保証」にも反対しているので，中国側がアメリカの「一つの中国政策」に言及する際には，①の「3つの米中コミュニケ」だけにする事例が多い，特に報道ではそうです（専門家の論文では②，③にも言及している）。

中国側は常に「アメリカの「一つの中国政策」とは「3つの米中コミュニケ」だけ」と国際社会が認識するように努力を続けています。

いずれにしても，アメリカの「一つの中国政策」を「中国と台湾がともに中国に属するという一つの中国政策」と中途半端に書くことは不正確であり，誤解を招きます。

今回のトランプ・習近平電話会談で，トランプ大統領が「尊重する」と述べたのは「我々（米）の「一つの中国」政策」であって，中国の「一つの中国原則」ではありません。

ホワイトハウスのリリースにある「習近平国家主席の求めに応じ」の意味は，中国側の発表と合わせると，トランプが米歴代政権の「一つの中国政策」を引き継ぐのかはっきりせよと習近平から求められたので答えたという意味ではないでしょうか。

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