林佳龍外交部長、日本経済新聞等の取材で台米・台日関係の深化と「総合外交」の推進を強調
外交部の林佳龍部長(外相)は3日、日本経済新聞(Nikkei News)及び同社が発行する英文メディア「Nikkei Asia」の合同取材を受けた。取材の内容は7日、「台湾外交部長『日本と災害対策で協力深化』 有事を念頭」(日本経済新聞)と「Taiwan foreign minister vows to work with Trump on 'democratic supply chain'」(Nikkei Asia)のタイトルでそれぞれ報道された。以下は林部長の発言の要点。
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中国の台頭
中国の台頭は、ルールに基づく国際秩序を脅かすものだ。こうした中で台湾はまさに、世界のパワーバランスの「ティッピング・ポイント」となっている。台湾は断じてチェスの駒ではなく、対局者の一方なのだ。台湾の国防予算はすでにGDPの2.5%に引き上げられている。これは日本やNATO加盟国の大部分を上回る。また、米次期大統領のトランプ氏の求めに応じ、自己防衛力を強化する決意を示している。さらに国防予算を引き上げて台米の安全保障上の協力を深化させる準備もしている。同時に、米国から購入した武器の納品遅延問題の解決方法として、例えば台湾が持つ製造能力を活用し、フレンド・ショアリング(friend-shoring)の形式で生産を加速させる可能性について米国と交渉していきたい。台米協力による無人機の研究・開発の推進は極めて重要だ。なぜなら無人機は、中国の軍事力を抑止する「非対称戦」の核心となるからだ。
台日関係
災害救助や人道支援などの分野で日本との交流・協力を強化していきたい。例えば昨年7月、台湾の海巡署と日本の海上保安庁は初めて捜索・救助を目的とした共同訓練を実施した。双方は災害対策で培った協力の経験を生かすことができるだろう。台湾と日本はまた、国境警備や第一列島線の安全保障分野でも協力すべきである。とりわけ無人機の開発と安全保障上の協力で、中国からの軍事的威圧に対応すべきだ。
経済分野
台湾の半導体産業は世界のサプライチェーンの核心であり、すでに世界の投資の対象となっている。これは国際経済協力における台湾の地位を押し上げている。日本政府も台湾との経済連携協定(EPA)の交渉を加速すべきである。なぜならそれは台湾と日本の経済連携を促進し、台湾が希望する環太平洋パートナーシップ(TPP)の加盟の布石になるからだ。台湾と日本はすでに約90項目の覚書を締結しており、さらに一歩進んで実質的なEPA締結に向かうべきだ。
総合外交
台湾が推進する「総合外交」は、「価値外交」、「同盟外交」、「経済外交」を3つの柱とし、その手段として「民主主義のサプライチェーン」あるいは「ノンレッド・サプライチェーン」(非赤供給網)の概念を打ち出し、中国を主軸とする「レッド・サプライチェーン」に対抗している。中国はいま「一帯一路」や「デジタルシルクロード」といった政策を講じて、他国の経済やサイバーセキュリティに影響を与えようとしている。中国の拡張主義の台頭に対抗するため、台湾は半導体、人工知能(AI)などの強みを武器に、近い理念を持つ国々と協力し、中国のサプライヤーに依存しない、より強靭性を持った民主主義のサプライチェーンの構築に尽力している。台湾は、地域の平和や世界の繁栄にとって重要な力であるだけでなく、世界の経済安全保障を守るための信頼できるパートナーでもある。台湾はこれからも、理念を同じくする国々との連携を強化し、中国の台頭や覇権に対抗していきたい。
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このほか「Nikkei Asia」は林部長が昨年執筆した書籍『経済日不落国:新国際雁行聯合艦隊』( A country where the economic sun never sets : Taiwan's strategy for a new flying geese paradigm with a combined fleet)についても紹介した。この書籍は、半導体産業の成功により台湾が世界各国の投資の対象になり、台湾海峡の安全が世界的に注目されていること、世界における台湾の地位を向上させ、台湾が「中堅国家」(ミドルパワー)並みの外交能力を持てるようになったことなどが書かれている。
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Taiwan Today:2025年1月8日
写真提供:外交部
外交部の林佳龍部長(外相)は3日、日本経済新聞(Nikkei News)及び同社が発行する英文メディア「Nikkei Asia」の合同取材を受けた。取材の内容は7日付けの紙面で報道された。左は日本経済新聞台北支局の羽田野主支局長、左から2人目は「Nikkei Asia」の記者Thompson Chau氏。