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  中華週報1865号(1998.7.2) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
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中華週報1865号(1998.7.2)



中華週報1865号(1998.7.2)

全力上げて台湾をハイテクアイランドに
     蕭万長・行政院長が将来への構想を語る

  ●三年後、五〇%が技術集約型

 蕭万長・行政院長は六月十六日、尹啓銘・経済部次長が台北の「国家図書館」で主催した「一九九八年産業科学技術発展における実務管理シンポジウム」に出席し、「ハイテクノロジーの発展は将来における経済発展の主軸であり、経済部は毎年ハイテク産業発展のために大型予算を組み、すでに多年来にわたって顕著な効果をあげてきた」と語るとともに、今後のハイテク産業発展についての構想を述べた。

 このなかで蕭院長は「わが国がこのハイテク産業の発展に投入している資金は、欧米や韓国にくらべまだ少ない。将来政府がこの分野の研究を強化し、民間の発展を支援することは非常に重要なことだ。

 ハイテク産業発展政策を強化するため、行政院内にすでに定期的な『科学技術会議』を開設しているが、これも政府のハイテク産業を発展させるための意欲を示すものである」と語るとともに、「目下わが国の産業構造は大幅な調整に迫られており、過去の経済発展は労働集約型産業に依存していたが、現在すでにそれでは新たな競争に勝ち抜けなくなっており、技術集約型ならびに高付加価値のある産業、たとえば電子、半導体、通信およびバイオテクノロジー産業の発展を目指すのが、天然資源に乏しく国内市場もさして広くないわが国の最も好ましい選択である。この観念を基本とし、わが国をアジア太平洋オペレーション・センターに発展させるため、三年後の二〇〇一年には技術集約型産業がわが国産業構造のなかで五〇%まで拡大し、研究開発費を国内総生産額(GDP)の三%にまで引き上げる」と表明した。

 さらに「中小企業の発展を支援するとともに、人材の育成を強化することも、産業のレベルを向上させるための重要な政策目標である」と述べ、「研究ならびに適切な指導を通じ、限りある資源と人力を有効に使ってこそ、高付加価値をさらに高め、効率のよい経済運営ができるのだ」と語った。
《台北『中央日報』6月17日》

  ●産業の空洞化は排除

 産業レベルの向上は、概して既存産業の空洞化をもたらしやすいものだが、行政院経済建設委員会の李高朝・副主任委員は六月十五日、同委員会で記者会見し「第一次バブル経済のあと、政府と民間の努力によってわが国の経済は確実に転換でき、現在ではハイテク・アイランドに向かって進んでいる。一九九〇年はバブル経済の崩壊によって、わが国経済は大きな痛手を受けたが、この病根を排除するため、蕭万長・行政院長が経済建設委員会主任委員であったときに経済振興策を打ち出し、民間発電所の認可、総合的産業区の開設など、今日すでに相応の成果をあげてきた。ただしそれらは、既存の他の産業を排除するものでは決してない。だからわが国経済の転換において、産業空洞化を懸念する必要はなにもない」と力説した。

 同時に李副主委は「今年上半期の民間による投資はすでに前年比四六%を越えており、このうち生産に必要な機械設備部門への投資は同二二%を越えている。したがって今日人々の注目を集めているレートの問題についても、一喜一憂することはない」と強調した。さらに「わが国はハイテク・アイランドに向かうことを経済発展の主軸としているが、これはあくまでその他の基礎的工業を軽視するものではなく、ハイテク産業は国内の人的資源とエネルギーを有効に使うことによって達成されるものである」と述べ、「外国の労働力に過度に頼るのは不健全であり、大量に外人労働者を導入する必要はない」とも表明した。
《台北『中央日報』6月16日》

週間ニュース・フラッシュ


◆クリントン・江沢民会談を注意深く見守る
 クリントン米大統領の六月二十五日からの訪中(共)について、張京育・行政院大陸委員会主任委員は六月十二日、行政院院会(閣議)において、「米国の議会と民間は、中華民国の利益を阻害してはならないと認識している」と述べ、「会談後、中共は両岸の政治交渉に積極的になる可能性があるが、弾力性を持つものと思われる。会談の内容をわれわれは注意深く見守る」と表明した。 《台北『中央日報』6月12日》

◆大陸の学位承認はしばらく停止
 教育部は六月十二日、昨年十月に大陸の大学卒業資格を承認するとしたが、「北京は依然としてわが国に対し敵視政策をとり、国際社会で台湾の孤立化をねらい、台湾同胞に対する非友好的な挙動をとっている」として、大陸の学位認定措置を今後事態の改善されるまで停止すると発表した。 《台北『中国時報』6月12日》

◆ピアニストの西村由紀江さんが台湾公演準備
 日本のピアニスト西村由紀江さんが台湾公演打ち合わせのため六月十五日に台北を訪問する。西村さんの台湾公演は八月二十七日から同三十一日までで、台北、台中、台南、高雄での演奏会が予定されている。 《台北『中央日報』6月12日》

◆両岸関係は現状維持が最も有利
 台北市長選挙に立候補が予定されている馬英九・政治大学助教授は六月十二日、国防部の女性将校を対象とした講演会で、「両岸統一の時期はまだ成熟していないが、独立に向かう必要もない。現状を維持するのがわが方にとって最も有利であり、『台湾優先』の立場を変更することはできない」と強調した。 《台北『中央日報』6月13日》

◆中央銀行が五億ドルで元買い支え
 日本円の為替レート下落で台湾元が一ドル三十五元台に突入する可能性が出てきたため、中央銀行は六月十二日、五億ドルを投入して元買い支えのため市場介入し、三十五元台に下落するのを阻止すると発表した。十二日終盤は一ドル三十四・九元だった。 《台北『工商時報』6月13日》

◆郷鎭市民代表と村里長選挙、国民党優勢
 台湾の末端民意代表である郷鎭市民代表(町会長)と村里長(村区長)選挙が六月十三日におこなわれたが、郷鎭市民代表は国民党一六八四、民進党一四九、新党二〇、無所属一八七二、村里長は国民党三五二〇、民進党一一七、新党六、無所属四〇八六となり、国民党が底力を見せた。  《台北『聯合報』6月14日》

◆国有地を将来は民間に経営委託
 財政部は六月十三日、すでに「国有地非公共財産の経営民間委託弁法」をまとめ、近日中に公布実施すると発表した。同弁法によれば、土地銀行が管理している遊休地、未開発の都市開発用地、農業用地、その他の公的機関が管理している遊休地の管理と経営が民間に委託される。これによって公有遊休地の有効利用が促進されると見られる。 《台北『工商時報』6月14日》

◆パナマは中華民国との友好関係維持
 バヤダレス・パナマ大統領は六月十五日、パナマ在住の華僑界代表との座談会で「パナマと中華民国との友好関係は強固であり、両国の各方面における協力関係は今後さらに強化されていくだろう」と表明した。 《パナマ『中央社』6月15日》

◆山中貞則・衆院議員が李登輝総統と会見
 防衛庁長官、環境庁長官、通産大臣などを歴任した山中貞則・衆院議員(日華議員懇談会会長)は六月十六日、総統府に李登輝総統を訪問し、今後の日本と台湾の友好関係増進について意見交換した。このとき、山中議員は李総統に、李鴻章の筆になる掛け軸一幅を贈呈した。 《台北『中央日報』6月16日》

◆台湾経済は今後逐次回復に向かう
 蕭万長・行政院長は六月十五日、行政院で定期的な財政会議を召集したが、邱正雄・財政部長は席上、「台湾経済は基本的に近隣諸国よりも健全で、また外国の外債を多く持ち、台湾自身の外債は少なく、台湾元の下落も輸出に有利に働いており、多くの有利な要素がそろっているため、市場の経済は今後逐次回復に向かうだろう」と表明した。 《台北『中央日報』6月16日》

◆トロボアダ・サントメプリンシペ大統領が訪華
 アフリカのサントメプリンシペのトロボアダ大統領が六月十五日、台湾を初訪問し、歓迎式典のあと李登輝総統と両国の友好関係強化について意見を交換した。また胡志強・外交部長は随行したサワドラ外相と「医療協力特別協定」の調印について話し合った。 《台北『中央日報』6月16日》

◆陸軍の精鋭化計画により戦力一三%増強
 陸軍総部署は六月十六日、「中共の敵前上陸を目的とした『鉄拳部隊』が不断に増強されているため、空降(空挺)特戦司令部を航空特戦司令部に改組し、規模を増強して『鉄拳部隊』への即応態勢をととのえる」と発表した。同時に、これと並行して遂行している軍の「精実案」(精鋭化計画)が完成すれば、陸軍の戦力は一三%増強されると表明した。 《台北『中央日報』6月17日》

◆経済自由化のなかで農民支援が重大な関心事
 李登輝総統は六月十七日、台北で開催された「世紀を跨ぐ農業政策シンポジウム」の外国代表団と会見し、「政府の適宜な農業政策が台湾農業発展の重要な要素の一つであった。また経済の自由化と国際化は、わが国にも多大の利益をもたらすが、このなかでどのように農民を支援するかが今後の重大な関心事だ」と強調した。 《台北『中央日報』6月17日》

◆許信良・民進党前主席が欧州訪問から帰国
 許信良・民進党前主席は六月八日から政党外交推進のためスウェーデン、フィンランド、ラトビアの三カ国訪問に出掛けたが、所期の日程を終え、同十八日帰国した。また許前主席は、陳水扁・台北市長が「もう一期台北市長を務めた場合、その任期中に総統選挙に立候補することはない」と表明したことについて、「高く評価する」と述べた。  《台北『中央社』6月18日》

◆政策に沿った大型海外投資の企業には優遇税制適用
 江丙坤・行政院経済建設委員会主任委員は六月十七日、中米五カ国駐華大使との懇親会において、「外交部と財政部は、政策に沿った大型投資をおこなう企業には、税の低減などの優遇税制を適用することで意見が一致している」と明らかにした。中米と東南アジアへの投資が適用範囲と見られている。 《台北『経済日報』6月18日》

◆米国は台湾の利益に損害を与えないと保証
 クリントン米大統領の訪中(共)に関し、胡志強・外交部長は六月十七日、台湾大学で講演し「米国が北京の主張を容認するのではないかとの憶測もあるが、すでに米国はさまざまなルートを通じ、何度もわが方に台湾の利益は損なわないと保証している」と表明した。 《台北『中央日報』6月18日》

◆クリントン訪中(共)中は軍の演習を停止
 軍の権威筋は六月十七日、「六月中旬からクリントン大統領の大陸訪問終了まで、海外からの不用意な憶測や誤解を招かないため、この期間中の陸海空三軍の大規模定期演習を七月中旬以降に順延する」と明らかにした。ただし行軍演習や通常の小規模演習は実施される。 《台北『中国時報』6月18日》

◆EUとの世界貿易機関(WTO)加盟交渉終了
 経済部消息筋は、EUとのWTO加盟交渉において、このほど自動車の輸入関税をWTO加盟十年目になる二〇〇八年からは一七・五%にすることで妥結したと明らかにした。それまでは二〇%が維持される。この自動車輸入関税の妥結で、EUとの交渉は終了したことになる。  《台北『聯合報』6月18日》

対大陸経済交流の問題点  「急がず忍耐強く」は必要

 行政院大陸委員会は六月十六日、陸委会の公式見解として「中共はまだ純経済的な姿勢で海峡両岸の経済貿易交流を見つめようとしておらず、政治的な意図を充満させている。したがって李登輝総統が主唱している『急がず忍耐強く』の政策は、当面の台湾の大陸に対する経済貿易交流における唯一の正確な政策である」と表明した。

 また陸委会は、一九八七年に当時の中共「国家主席」楊尚昆が「もし台湾の主要な大企業二十社を引き付けたなら、台湾経済の命脈を握ることができ、台湾は逃げようにも逃げられなくなる」と語ったことと、最近「国務院台湾弁公室主任」陳雲林が「両岸の経済貿易交流が活発になればなるほど、統一はわが方にとって有利になる」と述べたことなどを挙げ、「対大陸貿易や投資が無原則に膨張していったなら、国家の安全は巨大で深刻なリスクのなかに置かれることになる」と指摘した。    
《台北『中央社』6月16日》

台北市長選三候補の主張  馬英九、陳水扁、王建セン(火+宣)各氏

  国民党から台北市長選挙に出馬する馬英九・政治大学助教授は六月十五日、「どの候補者も国家へのアイデンティティを持たなければならない」と語り、「台北市政府は昨年の双十節に国旗を掲げなかったが、これは誤りだ。中央の法令に従ってすべての公的機関は国旗を掲げるべきだ」と現市政を批判した。

 民進党から再出馬する陳水扁・現台北市長は六月十四日、訪問中の米ロサンゼルスで「台北市民の生活レベルが向上し、環境も改善されたことは、市民が一番よく知っている」と実績を強調し、「年末の選挙には勝利を収める」と自信を示した。

 また新党から出る王建セン(火+宣)氏は六月十五日、「当選すれば地域安全ネットを組織し、台北市内九千余の隣保組織をこのネットで結び、犯罪防止に水も漏らさぬ態勢をとり、安心して生活できる環境を確立する」と語り、市政の重点を社会治安の確立に置くことを表明した。   
《台北『聯合報』6月16日》


米マスコミが台湾支持  台湾の特長と動きを詳報

  クリントン米大統領の訪中(共)を前に、国民党の饒穎奇・立法委員を団長とする超党派の立法委員訪米団一行十九人は米政府関係者や国会議員団をはじめワシントン・ポスト、アメリカン・ニューズ、ワールド・ウィークリィ、CNNなどを精力的に訪問し、中華民国・台湾の主張を展開し、米国が台湾の利益を損なわないよう主張しているが、このうちW・ポスト(6月17日)はこの一行の動きと主張を詳細に報道し、「台湾は東アジアの重要なメンバーであり、クリントン大統領が米国と台湾の長期的友好を重視するよう望む」と紙面で主張した。

 またクリスチャン・サイエンス・モニター(6月17日)も、アジア金融危機に台湾が動じなかった理由などを詳しく報じ、政府の政策および産業構造の特徴など、経済面から台湾の現況を紹介するとともに、その存在の重要性を指摘し、これを重視せよとする特集を組んだ。
 《ワシントン『中央社』6月17日》 


台湾は日本円の安定を歓迎  日米協調介入を高く評価

  アジア経済に深刻な影響を与えていた円安が、六月十七日、日米の協調介入によって一転円高を示し、長期的円安傾向に歯止めをかけたが、邱正雄・財政部長は同日、「日本円の安定は国内の金融市場に好ましい影響を与える。為替レートが安定すれば、株式市場もそれに反応を示すだろう」と、今回の日米協調介入を歓迎する発言をした。

 江丙坤・行政院経済建設委員会主任委員も「これは日本円の下落がすでに底打ちとなったことを示している。なぜなら日本は大幅な出超であり、これ以上円安がつづき日本の輸出力が強まれば、日米貿易摩擦がますます拡大し、これの重大性を日米が十分に理解しているからだ」と指摘し、日米協調介入を評価した。

 また台湾金融筋には、円安がこれ以上つづけば、人民元が持ちこたえられなくなり、日米協調介入の背後には中共の意向も働いているとする見方もある。 
《台北『工商時報』6月18日》


「武侠小説」研究、本格的に国際化
     台湾の古龍作品も日本に初紹介

 東呉大学、淡江大学、漢学研究センターの共同主催による「中国武侠小説国際学術会議」が五月二十八日と二十九日の両日、台北の国家図書館で開催され、台湾だけでなく大陸や日本、韓国、米国の研究者が出席し、十六篇の論文が発表された。日本からは、早稲田大学の岡崎由美教授と土屋文子講師が参加し、岡崎教授は二十九日、「『剣客』と『侠客』│日中武侠小説の比較」と題する発表をおこなった。

 当日は、主催者側でとくに宣伝をおこなわなかったにもかかわらず、インターネットで情報を得た多くの若い「武侠迷(熱心な武侠小説ファン)」が集まり、武侠小説が世代を超えて根強く支持されていることを示した。会場の国家図書館には、武侠小説の剣客、英雄たちが使用する各種の武器なども展示され、多くの参観者の関心を集めた。

 武侠小説はこれまで、ややもすれば「ひまつぶしの娯楽小説」と見なされ、一般の小説よりも一段低いものと位置付けられてきたが、今回の国際会議の開催によって、その研究対象としての学術的な地位が大きく向上したことになる。今回の会議に先立ち、淡江大学では先学期より、一般教養科目として「武侠小説」が開設され、学生の高い人気を呼んでいるという。このほか同大学には、全国唯一の「武侠小説研究室」があり、一万冊以上の蔵書を誇る。さらに「淡江武侠網」というホームページ(http://www.knight.tku.edu.tw)も開設し、武侠小説研究のためにユニークな取り組みが続けられている。こうした淡江大学の試みに対して、今回の会議では、より多くの大学が同大学にならって一般教養科目に「武侠小説」を加えるよう提言がなされた。武侠小説研究は、今後の一層の広がりが期待される。

古龍作品、今年中に日本登場

 武侠小説家の中で最も人気があるのは、香港の金庸と台湾の古龍であろう。このうち、金庸の作品は比較的研究が進んでいるが、古龍の場合、一九八五年に死去したときに小説が連載途中であったため、その後、さまざまな「続編」が出現し、巷では多くの「ニセ古龍小説」が流布しているのが現状である。こうした状況に対して、最近になってようやく古龍の作品を整理し、新版を出版しようという動きが出て来た。

 こうした台湾での再評価の動きに答えるように、日本でも近々、古龍の代表作が翻訳、出版されることになった。すでに、台湾の「風雲時代出版」と日本の小学館との間で正式な契約が結ばれ、今年中に、文庫版として発行される予定である。 この日本語版の翻訳を手がけるのが、今回の会議にも参加した早稲田大学の岡崎教授と土屋講師である。岡崎教授は、徳間書店が二年前から発行している金庸作品シリーズの翻訳・監修者として知られ、土屋講師も岡崎教授とともに同シリーズの翻訳にたずさわっている。

 岡崎教授によると、金庸の作品は歴史的色彩が濃く、優雅な文体を特徴とするのに対し、古龍の作品は、綿密なプロットとロマンチックなストーリーが特徴で、文体が簡潔な分、そのムードやイメージを日本語に表現するのは、かえって至難の技だという。また、岡崎教授らは、「古龍の作品には、推理小説やミステリー小説の要素も強く、日本の読者にも幅広く受け入れられるに違いない」と期待している。
 《台北『聯合報』5月29日より》

台湾はアジアの模範生
 米『タイム』誌が解説

  米『タイム』誌はクリントン大統領の北京訪問に際し、最新号で李登輝総統への単独インタビュー記事を掲載したが、そのなかの解説において「さまざまな方面から言って、台湾は米国の眼には模範生として映っているが、台湾の民主、繁栄、自由が次の時代まで継続するかどうかはワシントンの問題ともなる」と解説し、「台湾は事実上、政治において準独立の状況にある」として、この状況が「最終的に北京の最後通牒を触発し、封鎖かあるいは攻撃をした場合、米国の出方がその将来に大きな影響を及ぼすことになろう」との説明を加えた。

 さらに同誌は「クリントン大統領が台湾に損害を与える新たな共同コミュニケに調印する可能性はあまりない」と報じ、台湾が「台独に向かう可能性」にも触れて、その理由を「台湾の生活は長期間、大陸よりも自由で快適で繁栄しているからだ」と説明した。
《台北『中国時報』6月15日》 

台湾ハイテク産業の新拠点 ②
     台南科学工業園区を見る
      行政院国家科学委員会

 第二期開発地区は、第一期開発地区の産業の発展および将来における内外の産業技術と市場の状況を見ながら、適時に計画を立てる。

●園区の重要管理原則
 (1)園区の土地は賃貸で、メーカーが必要であれば工場を各自で建てるか、または園区で建設された標準工場建物を借用する。これによりメーカーの土地取得コストが押さえられ企業の競争力のアップにつながる。

 (2)また園区では、新製品と新技術および広大な市場の有無を審査の基準として、園区をハイテク産業の将来性のある発展へと導く。

●特別地域の発展構想
 園区の発展に符合させるため、コストを押さえた開発方法を採り、建物と土地の使用を管理し、完全なハイレベルの都市計画を推進する。

 特別地域の施設内容は以下のとおりである。

 ①園区の従業員およびその家族約十一万人の住居とレジャー施設を提供する。
 ②二カ国語学校を含む従業員子女の教育設備を提供する。
 ③研究開発機構やビジネス業務、重要会議などの場所を提供する。
 ④園区の環状道路、排水などの地域性、システム性の施設用地を提供する。

 そのほか、台南県政府は二〇〇四年に特別地域内に四百ヘクタールの土地を取得し、今後の園区の拡充発展に見合ったものを工業区の企画とする。

 特別地域の設置、開発と管理は台南県政府が責任をもつ。

●園区の建設日程

 園区の開発は三段階に分けて進行し、九六年七月より正式に着工しているが、全工程終了までに十五年を予定している。

 ▽計 画
  一九九五年五月~九六年十二月

▽第一期開発
公共施設工事設計
   一九九六年一月~二〇〇〇年十二月

  標準工場建物計画設計(産学センターを含む)
 一九九六年七月~二〇〇一年十二月

公共施設工事施行および標準工場建物建設
 一九九六年七月~二〇〇三年十二月

 ▽第二期開発 
公共施設工事設計
   二〇〇一年一月~二〇〇六年十二月

標準工場建物計画設計
   二〇〇三年一月~二〇〇七年十二月

  公共施設工事施工および標準工場建物建設
 二〇〇四年一月~二〇〇九年十二月

▽長期開発
特別地区内工業区工事設計および開発
 一九九九年一月~二〇〇九年十二月

Ⅲ専業区  産業の種類と見通し

  マイクロエレクトロニクスと精密機械専業区

 ▽目標

①生産高
  二〇〇五年 七百億元(約二千八百億円)
  二〇一〇年 一千二百五十億元(約五千億円)

②工場建設用地
  第一期 四十二ヘクタール

③従業員数
  二〇〇五年 五千人
 二〇一〇年 七千人

▽産業の種類

●情報通信産業
 情報通信産業は、将来世界の巨大産業となるだろう。国内ではパソコンと半導体産業の目覚ましい発展にともない、情報通信産業の優れた条件を構築している。園区では部品や装置からシステムまで完備された基礎構造体系を確立することになっており、また、情報通信設計センターを建設する計画があり、また、国科会が推進する情報通信総合型研究計画および工業技術研究院、電信研究所の研究開発および人材などによって、産業界を支援する。このほか、できるかぎり産業界に進出しやすいよう奨励と支援を提供して、情報通信産業の発展につながるようにする。 市場の潜在力および国内産業技術のレベルに合った初期段階計画の主要生産品は以下のとおりである。

 ①移動体通信システム
 ②ポケットベルシステム
 ③コードレス電話システム
 ④携帯端末(モバイル)システム
 ⑤広域ネットワーク(WAN)/ (LAN)
 ⑥マイクロウエーブ通信システム
 投資申請をおこない、外国企業やその支社および合弁会社の設立を促進する。各製品のキーパーツやコンポーネントは半導体専業区内で計画する。

●精密機械産業
 機械工業のレベルアップのカギは、自主的な製品設計能力であり、そのためには研究開発に力を入れなくてはならない。園区では基礎構造および設備を共用して国科会が成功大学など八校の開校予定の大学に建設される「機械設計実行センター」の研究開発を支援し、精密機械産業の導入を促進する。また、初期段階計画の主要製品は以下のとおりである。

①精密工作機械
②汚染防止設備
③FA設備とシステム
④医療機器、半導体、コンピュータ周辺機器など精密機械設備
⑤包装機械
⑥射出成形機械
⑦精密金型
⑧精密トランスミッション
⑨自動車、自転車の電動装置およびブレーキ
⑩時計キーコンポーネント
⑪水力プレス、水圧ポンプ
⑫工作機械高速心棒
⑬マイクロモーター
⑭コンプレッサー
⑮コントローラー

●医療機器産業
 医療機器産業の市場は、年々増加の傾向で台湾は国民健康保健制度を実施しており、需要も大幅に増加している。今後台湾のコンピュータおよび機械産業の基礎の下、充実した医療と医学研究の人材が強化されれば、医療機器産業にとってもプラスになり、全国民の福祉に貢献することができる。

 初期段階計画の主要製品および技術は以下のとおりである。

①人工皮膚、薬品送達システム、心臓血管カテーテル関連製品、骨インターナルプロテーゼなどの高付加価値製品
②高品質、高能率製造技術
③遠隔診断システム、診断分析機器、医療ポジッショナー、血糖値測定システムのような中、小型専門医療機器システム
④医療情報、イメージ処理システム
⑤運動機材、健康パラメーター測定システム、リハビリ補助機材のような健康管理製品
⑥バイオセンサーと超音波探針
(以下次号)

李登輝総統が語る両岸問題と米国

  米『タイム』誌単独インタビュー全文

 六月二十五日からの米クリントン大統領の北京訪問を中華民国・台湾は注意深く見守っており、また国際社会はそれに対する台湾の動向に注目している。このことから、米有力誌の『タイム』は六月中旬、李登輝総統に単独インタビューをし、クリントン大統領訪中 (共)前の号に掲載した。以下はその全文である。

問:
 クリントン大統領が北京を訪問したとき、「台湾」が議題として討論されると思われるが、あなたはこれを憂慮されているか。

答:
 それについて、私は楽観している。第一に米国はアジア太平洋地域の国際秩序を維持しようとしており、第二に米国はこの地域に民主と人権を広めようとしており、第三に米国は東アジアの経済成長が持続することを望んでいる。中華民国はこれらの進展について大きな貢献をしており、また海上交通の戦略的拠点でもある。わが国の努力と米国のこの地域における価値観と理想は符合している。北京が米国にさまざまな要求を出したとしても、私は台湾関係の問題 で米国が譲歩することはないと信じている。なぜなら、台湾は米国にとって重要だからである。

問:
 ワシントンと北京の関係が良好になれば、北京と台湾の関係も改善されるとする意見もあるが、あなたはこれをどう見ているか。

答:
 クリントン大統領の北京訪問準備の前から、海峡両岸はすでに対話を回復している。米国と中共の関係は改善されるべきであり、同時に台湾と米国の関係も増進されるべきだ。この三者の相互関係が改善され、増進されるところに、アジア太平洋地域の安定が維持されるのだ。

問:
 あなたは、米国の議会が台湾に圧力をかけ、両岸交渉において事務的な議題から「統一」に関する政治的な議題に移行するよう迫るかも知れないということを懸念しているか。

答:
 政治的な議題と事務的な議題を分離することは不可能であり、またその必要もない。われわれの両岸交渉に対する姿勢は十分開放的である。両岸間における多くの問題は解決されなければならないが、基本となるのはまず相互信頼を確立することだ。

問:
 あなたが江沢民やその他の北京の指導者らと話し合うことは可能だろうか。

答:
 昨年中共の党代表大会のあと、北京指導部の権力は強化され、かれらは現在経済改革に取り組み、国有企業を再度見直し、政府の簡 素化も進めようとしている。現在のかれらの経済は以前よりも実務的だ。しかし残念ながら、この実務性が両岸関係にまで拡大されていない。中共の台湾に対する政策はまだ改善されていないばかりか、その策略は以前よりも活発化している。われわれは、北京が今日の経済方面における実務的な姿勢を対台湾 政策にまで拡大することを望んでいる。

問:
 大陸の改革について、台湾はどのような協力ができるだろうか。

答:
 われわれはすでに技術合作をとおして大陸農業の改善に協力したいと提示しており、また両岸が共同で東南アジアの金融危機克服に協力しようと提議している。軍事面においては、双方はある種の規制を確立し、誤解が生じる前に意思の疎通を図らなければならない。このほか、北京は現在国有企業の改革に取り組んでいるが、これについてはわれわれは少なからず経験を積んでおり、これを大陸にも還元したいと願っている。

問:
 北京は貴国が「一つの中国」の原則から離れようとしていると非難しているが、あなたはこれをどう思うか。

答:
 この批判は事実に反している。この八十七年来、中華民国は一貫して主権独立の国家である。北京は台湾に対して管轄権はなく、同時にわれわれにも大陸に対する管轄権はない。一つの分治された中国というのが現実であって、双方はこの中国が民主・自由および均富の制度下において統一されるよう努力しなければならないのだ。

問:
 もし、台湾独立を支持している民進党が政権を取ったなら、米国はどう対応すべきだろうか。

答:
 わたしは、民進党が短期間内に政権を取る可能性はないと見ている。また、七割の台湾住民が「台湾共和国」の宣言をする必要はないと認識しており、同時にかれらは大陸との対話を支持している。多くの住民がこうした意見を持っている以上、民進党が政権を取るに足る支持を得るのは不可能だ。米国はこれについて憂慮する必要はない。

問:
 北京も民進党が政権を取るかも知れないとの憂慮をする必要はないか。

答:
 ない。現在、北京は民進党の幹部らと接触しようとしているが、それは誤った方向だ。中共に必要なのは、わが国の国民を安心させることだ。もし、かれらが台湾への恫喝をつづけるのなら、またわが国の政府上層部の者が外国を訪問することや、国際社会に加わろうとする活動なども含め、われわれの行動のすべてをいわゆる「台湾独立」への道だとして非難するなら、われわれの国民は当然孤立感を味わい、結局は独立を求めるようになるだろう。

問:
 今回のアジア金融危機は、この地域における台湾の役割を変化させただろうか。

答:
 わが国はアジア太平洋地域にかなりの投資をしており、東南アジアから多くの労働者も受け入れており、当然われわれはこの金融危 機に重大な関心を持っており、たとえばインドネシアに二十万トンのコメを援助する予定であり、また前払い方式によって同国から原油を買い付ける計画もあり、さらにわが国の現地における銀行に、現地企業に対する融資を拡大するようにも指示しており、こうした財務上の支援を継続しようとしている。わが国はマレーシアに数社の投資顧問会社を設立しており、タイやフィリピンにおいても同様だ。われわれは、東南アジア諸国とは一つの大家族であると認識している。

問:
 北京は、貴国が台湾元を切り下げており、金融危機の解決に力になろうとしていないと非難しているが、これをどう思うか。

答:
 北京のそうした非難はまったく荒唐無稽なものだ。中華民国は一九七九年に為替変動相場制に移行し、レートは市場の動向によって決まるようになっている。金融危機が発生した当初、わが国の中央 銀行は七十億ドルを投じて台湾元のレート維持に介入したが、下落を防ぐことはできなかった。過去を振り返れば、二つのことが金融危機の発生を誘発したのではないかと思われる。それは一九九四年の大陸人民元の四〇%切り下げと、最近の円安傾向である。北京がわれわれを非難するのは、まったく誤りだ。

問:
 では、人民元はいつか切り下げられるだろうか。

答:
 それは答えにくい問題だ。大陸はいま困難に直面し、多額の債務を抱え、かれらの消費量と輸出量も下降している。人民元が切り下げられたなら、わが国の大陸に進出している約三万社の企業が影響を受けることになり、したがってわれわれは人民元が下落するのを決して望んではいない。

問:
 アジア金融危機は台湾海峡両岸の協力関係を促進するだろうか。

答:
 中国大陸は一つの大きな経済体であり、いかなる大きな外部の力でもその問題を解決するのに足りないことは、米国についても言えることだろう。人民元の切り下げ問題について、われわれに協力する方法はない。レートは基本的にその国の購買力と経済体質を反映するものであって、もし経済情勢が持続して悪化すれば、レートの 安定維持は困難となろう。

問:
 あなたが大陸を訪問することはあるだろうか。

答:
 二年前、私は「平和の旅」として大陸を訪問することについて述べたことがある。この提議は現在もなお有効であり、問題は北京が私をどのように呼称するか分からないところにある。クリントン大統領が北京を訪問したとき、江沢民に「あなた方はなぜ李登輝総統に北京に来て話し合うことを要請しないのか」と質問するかも知れない。

問:
 あなたは北京があなたをどのように呼称すべきとお考えか。

答:
 私はこの国の総統であり、かれらは私を李総統と呼んでもいいのではないか。二千百数十万の台湾住民は、私が尊厳なく大陸を訪問することに同意しないだろう。つまりわが国は、一つの民主的な国家なのだから。

問:
 北京の指導者は、永遠にあなたが総統の身分で大陸を訪問することを望まないのではなかろうか。

答:
 どうしてできないことがあろうか。かれらが認識を改めればできることだ。つまり中国は目下分治の状態にあり、海峡両岸がそれぞれに政治実体になっているのであって、統一問題も含め、双方は多くの関連する議題を話し合うことができるのだ。

問:
 二十五年後の両岸関係はどのようになっているだろうか。

答:
 将来の両岸関係は、国際環境と台湾ならびに大陸双方のそれぞれの目的と内部の状況によって決められるだろう。国際環境について言えば、民主と自由が主流となるだろう。このほか、世界が一体化していくなかにあって主権国家が存在するという状況下に、経済が国境を意識しない最上の要素となるだろう。つぎに情報、通信の発展により、世界のいかなる一角で発生した事件も、たちまち全世界に伝えられるようになっている。こうした三大趨勢は、中国大陸が 民族主義や覇権主義を持続させる ことを困難にするだろう。

 国内情勢の面では、大陸の人民はさらに多くの自由と法治の強化を要求するようになり、その社会は多元化し、民族主義の声はしだいに弱くなり、こうした状況を背景に、両岸関係は緊密化を増すだろう。そうなったころ、大陸の国民一人当たり平均所得は二千ドルに達し、わが国は二万ドルから三万ドルの間にあると推測される。両岸の経済の差が縮まるのは相当重要なことであるが、もっと重要なのは双方の心理的な差を縮めることである。東西両ドイツが統一されてからすでに十年近くになるが、双方の心理面の差は依然存在している。もし今後二十五年間においていかなる不測の事態も発生しなかったなら、両岸関係は現在よりさらに緊密なものになっていると思う。

問:
 あなたの見方は相当楽観的なようだが。

答:
 私がまだ若い学生だったころ、胸には夢を描いていたものだった。現在七十六歳となったが、私はまだ夢を描いている。この夢を実現するため、私は楽観的な考えを保持しているのだ。世界はいま改革のなかにあるが、最も重要なのは博愛と誠実さである。
《台北『中央日報』6月16日》

台湾における放送政策の変化㊦
NHK放送文化研究所主任研究員 橋本 秀一

●ケーブルテレビ(続)

 (3)衛星配信で近隣諸国にも台湾の映像が到達

 台湾は国連の加盟国ではないため、ITU(国際電気通信連合)から衛星軌道の割り当てを受けることができない。したがって「自国衛星」はなく、番組供給会社は国内のケーブルテレビ局向けの番組配信にPANAMSAT-2やAPSTAR-1など外国の衛星を使わざるを得ない。これが、台湾の映像が、香港、中国大陸南部、東南アジアなど近隣諸国の華人社会にも届くという結果を生み出した。また、日本のスーパーバードB号機を使った番組配信もおこなわれており、この映像は日本国内でも見ることができる。これは、広い意味での台湾の安全保障にも役立っている。

●非国民党系の地上波テレビ局開局

 一方、地上波テレビでは一九九七年六月十一日に、台湾で初めて国民党系ではないテレビ局・民間全民電視台(略称・民視)が放送を開始した。これによって、台湾の地上波テレビは四局体制となった。

 国民党系の三局は民視の発足までの約四半世紀の間、台湾の地上波テレビを寡占してきた。戒厳令下の台湾で三局は長い間、国民党政権のスポークスマンの役割を担ってきた。この三局の職員は、外省人で国民党籍の者が中心であった。このうち国民党経営の中視の職員は、今でも国民党員でなければならない。三局の番組、特に報道番組が、今日でも国民党に有利なように伝えているのでないかという不信感を持たれるのも、こうした背景による。

 多チャンネル化で、以前より影響力は衰えたとはいえ、地上波テレビの力は依然として大きなものがある。例えば視聴率では、九七年四月現在の週間平均で、三局は午後六時から九時までの間は圧倒的に強く、ケーブルテレビのチャンネルに大きな差をつけている。

 こうした状況のなかで、唯一の非国民党系の民視が九五年六月に認可された。この申請には、国民党系、民進党系、政治的には中立の番組製作会社(年代グループ)の三者が競願したが、民進党系の民視が認可された。認可に当たっては、当局側の民進党に対する政治的配慮があった。 民視の役員のなかには民進党の幹部が多く、また一株一万元(約四万円)の一株株主を含め株主の多くは、民進党員か支持者とみられている。しかし民視は、放送内容では党派色を出さない中立的な放送局となることを目指している。

●公共テレビ

 台湾の公共テレビ(公共電視台)に法的な根拠を与えるための法律「公共電視法」が九七年五月末にようやく成立し、公共テレビは九八年一月一日に正式に放送を開始することになった。公共テレビは九〇年六月に準備委員会を発足させて以来、施設面の整備と職員の研修をイギリスのBBCなどで進めてきたが、公共電視法案の立法院(国会)での審議では、特に野党の間から、「結局は四番目の国民党のテレビ局になる」として反対する動きが強く、長い間難航していたのである。

 公共テレビの運営費は、行政院の予算から支出される。行政院は初年度分として十二億元(約四十八億円)を支出するが、立法院が付けた付帯条件では、この金額は毎年一〇%ずつ減額され、六年目には初年度予算の半分になる予定だ。不足分は番組の販売などの自主財源で補えというものである。公共テレビも、国民党系の三局に対抗する「公正・中立な台湾のテレビ」を目指しているが、法案の成立が大幅に遅れ、その間民視が開局するなど環境が変わってきているので、先行きは必ずしも楽観できない。

三、李登輝総統の役割

  台湾の民主化とメディアの改革は、李登輝総統の存在を抜きにしては考えられない。例えば、民間のエネルギーの強さを見せつけたケーブルテレビの急増、特に「民主台」の増加は、戒厳令下ではあり得ないことだった。ケーブルテレビが急増した八八年九月は、蒋経国の急死によって総統に昇格した李登輝が、ようやく国民党主席の地位を獲得した直後である。言論の自由を求めて、長年うっ積していたエネルギーが李登輝の登場で一気に爆発したかのようだ。

 民視の誕生についても同じことがいえる。高雄事件で懲役刑を受け、その後仮釈放された民進党の幹部黄信介が八九年に李登輝総統に会った際、民間テレビの開設を要請した。李登輝は担当者に確認し、肯定的な返事をしたという。

  また李登輝総統は、国民党系の三局のニュース編成の在り方を厳しく批判し、「このままでは三局はダメになってしまう」と、関係者の奮起を促す一方、民視の開局式にかけつけ、「国民はさらに自由と民主化を求めている」と激励しているが、こうした行動は、国民党主席という立場を考えると一見矛盾しているようにみえる。しかしここには、メディア政策にも競争原理を導入し、民主化を進めていくという李登輝総統の基本姿勢が読み取れる。

  台湾のなかで李登輝総統が一体何をやろうとしているのか、李登輝自身が司馬遼太郎との対談で心情を吐露している。「いままでの台湾の権力を握ってきたのはすべて外来政権だった。国民党だって外来政権だ。台湾人を治めにやってきただけの党だった。これを台湾人の国民党にしなければいけない」。台湾でなお大きな勢力を持っている外省人中心の国民党保守派を力で一掃することは台湾を混乱に陥れ、「中国は一つ」という主張でこれら保守派とつながっている中国の介入を招きかねない。また、こうした強硬策は、李登輝総統の「静かなる革命」の手法ではない。

  おわりに

  同じ時期に民主化が始まり、放送の分野では多チャンネル化を始めた台湾であるが、十年を経て、これまで述べたようにかなり違う道を歩み始めたようにみえる。その最大の理由は、台湾では蒋家の国民党政権時代には、台湾人は「国家」から襲われる危険におののいていた。ここでは、公益はすなわち国民党政権の利益を意味していた。だからこそ台湾の放送は、ケーブルテレビでも、また、本稿では取り上げなかったが、「地下ラジオ」にしても、「権力」に挑戦することで台湾人の支持を得てきたのである。だた、台湾の民主化がさらに進めば、放送の在り方も当然変わってこよう。

 民主化が本格化した八八年の台湾の一人当たりのGNPは六千五十三ドルと、当時のアジア地域のなかで極めて高く、経済の成長と民主化との間の密接な関係があることが、これからもうかがえる。しかし、四小龍の一員であり現在に至るも、政治的には開発独裁を続けるシンガポールの同じ年の一人当たりのGNPは七千四百六十四ドルと、さらに高くなっており、経済成長だけが民主化の要件ではない。

 メディア政策、特に放送政策は政治の開放度が低ければ低いほど、その国の政治と密接に結びついていることは言うまでもない。今後は、依然として開発独裁国が多い東南アジアや中国を対象に順次比較研究をおこない、開発独裁国が民主的な政治体制に移行して、メディア、特に放送政策を自由に展開するようになる条件は何かを探っていきたい。それが、今後の東南アジアの諸国や中国の行方を予測することにつながるように思えるからである。 (完)
《『情報通信学会誌』第56号論文より転載》


米国に求める新たな「三不」
   『中華日報』6月5日

 クリントン米大統領の中国大陸訪問によって、海峡両岸の対米外交の新たな競争が始まった。これに先立ち、北京が米国に、台湾に対する「三不」(台湾独立、「二つの中国」または「一中一台」、台湾の国連加盟の不支持)の立場を改めて表明するよう求めたとのうわさもあったが、これについて、中華民国外交部は六月四日、与野党の立法委員訪米団に対して、今回の米中(共)首脳会談がわが国に与える影響を最小限にするため、米国が「新しい三不」によって北京の「三不」に代えるよう希望すると表明した。米国のわが国に対する友好と北京に対する警戒心によって、わが国のこうした要求は一定の効果を上げるに違いない。

 米国はこれまで、クリントン大統領の訪中(共)において、四つ目の共同コミュニケ調印および台湾の権益を損なういかなる行為もおこなわないとくりかえし表明してきた。しかし、江沢民は六月三日、新華社のインタビューに答え、クリントン大統領との会談では当然台湾問題も議題となると述べ、さらに過去の米中(共)共同コミュニケおよび昨九七年の江の訪米の際に発表された共同声明の中で、米国は「二つの中国または一中一台、台湾独立、台湾の国連などへの加盟」に「反対する」との立場を明確に示していると指摘した。江の談話には注意すべき点がある。江がこれまでの「不支持」を「反対」と表現している点である。単に外電の翻訳の問題なのか、江が故意に言い換えたのかは定かではないが、われわれは決して油断すべきではない。

 今回の米中(共)首脳会談は、まさにアジアで問題が頻発している時期におこなわれる。金融危機はいまだ解決されず、インドネシアや朝鮮半島の政局は不安定で、インド、パキスタンは核実験競争を展開している。ホワイトハウスの情報によると、クリントン大統領は今回、南アジア情勢、核兵器拡散防止、人権問題、貿易など、国際安全および政治経済に関わる問題を話し合う予定である。政治評論家は、中国大陸のG7加盟問題および一連の協力関係について進展が見られると予測しているが、いずれにせよ、将来、双方の関係がより緊密になることは間違いない。わが国の希望は、これにより情勢が安定し、米中(共)双方だけでなく両岸関係の平和発展にもプラスとなることだ。

 わが外交部の唱える「新三不」とは、北京に対して、「台湾海峡での武力不使用」、「台湾の国際活動に圧力を加えないこと」、「北京自身の『一つの中国』の定義を米国や台湾に押し付けないこと」を要求するよう、米国に求めるものだ。外交部は、立法委員訪米団が、米議会と行政部門およびシンクタンクの関係者にわが国の希望を伝えるよう望んでいる。与野党の立法委員が、国家の安全に高い関心を持ち、国会外交によって側面支援をすることができれば、米中(共)首脳会議において台湾問題が話し合われた時に、かなりの効果を発揮するだろう。

 米国は、わが国の要求が主権国家として最低限度の条件であり、十分に支持できると認識しているはずだ。さらに、立法委員訪米団が「統一か独立か」という対立点を捨て、国家の利益を第一に考え、明確にわが国の立場を表明して、米国の支持を勝ち取ることができれば、クリントン政権にわが国の権益を重視し、北京の横暴な要求に屈しないよう促すことができるだろう。
 

文化・芸能ミニ情報

金城武、日本のドラマ初主演

 注目の台湾出身の俳優、金城武さんが、現在上映中の映画「不夜城」に続き、日本のテレビドラマに初主演することになった。フジテレビ系列で七月七日(火)午後九時より放送が始まる「神様、もう少しだけ」で、エイズに感染した女子高生と恋に落ちる音楽プロデューサーを演じる。金城さんは、今年の日本アジア航空のイメージキャラクターも務め、日本の各雑誌で大きく取り上げられるなど、人気が高まっている。
お 知 ら せ

中華民国(台湾)電影会・大阪

●七月上映会

 『國四英雄傳』85年 100分  (英語・中国語字幕)
   監督:麥 大傑  出演:江 霞

 [周儒林と陳敬爾は同級生で二人とも高校受験に失敗、國四(浪人生)になってしまう。彼らは予備校に行き始めるが、来年の受験で第一志望に必ず合格するよう、徹底した管理下におかれる。毎日が同じことの繰り返しで飽き飽きしたころ、陳敬爾は家族とともにアメリカに移住してしまう。孤独な日々を送ることになってしまった周儒林は、自分の名前が第一希望合格と校内の掲示板に掲載されることを願いながら日々勉強に励む]

日 時 7月11日(土)午後6時半~
会 場 大阪市立北市民教養ルーム (大阪市北区茶屋町1-4 梅田・阪急イングス裏)  ℡06-371-1833
会 費 五百円(ウーロン茶付き)
問合せ 亜細亜電影迷倶楽部  ℡0798-67-2300(前田)

麻薬犯罪増加の傾向を正視せよ
    『中華日報』6月4日

 台湾の麻薬関連犯罪の件数および「再犯者」の人数は昨九七年、過去最高を記録した。一方、新しい「麻薬被害防止条例」が五月二十二日より施行されたが、この中では、麻薬使用者を「患者」とみなし、「観察・治療」の結果、効果が認められれば刑を免じると定められている。このように、麻薬犯罪が激増しているにもかかわらず、法律では麻薬使用者に対して寛大な措置を採るという状況のもとで、われわれは今、新たな挑戦に直面しているのだ。

 法務部と国防部は六月三日、「全国麻薬撲滅会議」において、次のような統計を発表した。①台湾地区の昨九七年の麻薬関連事件における再犯者の割合は、九二年の一五・七%から五八・九%に増加、人数は過去最高の約一万五千人。②昨九七年に新たに摘発された麻薬関連事件は、前年比二四%増。③昨九七年に押収された麻薬の総量は約二千九百キロで、前年比約四〇%増。④地方における麻薬関連事件の件数は都市部に劣らず、麻薬犯罪に地域差がないことを示している。⑤軍が兵士に対して実施したアンフェタミン(覚醒剤の一種)検査では、陽性反応者の割合が過去最高となった。

 このように、麻薬の蔓延は深刻であり、何としてもこれをくい止めなければならない。わが国は、一九九三年より「全国麻薬撲滅運動」を展開し、政府による厳しい取締りのほか、民間に次々と「麻薬防止協会」が設立されて、学校や地域でキャンペーンをおこない、一時は非常に効果を上げた。この結果、麻薬関連犯罪は年々減少する傾向にあったが、どういうわけか、昨年になって突然増加に転じた。われわれは、この原因を深く検討する必要がある。

 麻薬の供給源を見ると、昨年の押収品の六八%が中国大陸からのもので、大陸がなおも麻薬取引の一大拠点であることが伺える。国際的な麻薬販売組織が台湾をターゲットにする理由の一つは、連戦副総統が「全国麻薬撲滅会議」で指摘したように、台湾はアジア太平洋地域の交通の要であり、彼らは、台湾を麻薬取引およびマネーロンダリングの基地にしようと企てているということだ。

 四つの関連法の施行により、麻薬撲滅対策には、確固たる法的根拠がある。また、麻薬の定義も明確であり、アンフェタミン、エクスタシーなどの新しい種類の覚醒剤もすべて含まれている。また、政府は尿検査などの作業を民間の医薬業界と協力しておこない、全国民的な麻薬防止態勢も整っている。こうした対策が確実に実行されれば、効果は直ちに現れるはずだ。具体的な方策として:

 一、法務部など関連機関は、四つの麻薬禁止関連法の定める「観察・治療」施設の充実を迅速に図り、麻薬中毒者を収容して治療をおこなう。さらに、追跡調査や指導をおこない、短期間で再犯率を下げて、麻薬の流通を抑える。

 二、麻薬捜査およびマネーロンダリング防止システムの確立については、麻薬の供給源と資金の行き先を徹底的に捜査し、「黒幕」を見つけ出して厳罰に処する。黒幕が国際的な麻薬販売組織であれば、国際刑事警察機構(ICCP)と協力して徹底的に追跡する。

 三、中国大陸は麻薬取引の一大拠点であり、北京当局も麻薬販売組織撲滅に協力する意思がある。両岸は、麻薬犯罪の捜査や防止、犯人の引き渡しなどを強化して、協力関係を打ち立てるべきだ。

 このほか、われわれは麻薬常習者に対しても、新しい法律が提供するチャンスをとらえ、施設を利用して一日も早く麻薬から足を洗い、新たな人生を始めるよう呼びかけたい。また全国民にも、麻薬撲滅に立ち上がり、麻薬のない健全な社会を創造するために協力するよう期待するものである。


春夏秋冬

 インドの核実験に対抗してパキスタンまでがそれをおこない、まさに震撼するものがある。その悲惨さを知っている日本としては、当然ながら核反対への声も世界で最も大きなものがある。核兵器が絶対悪であることには、誰しも異論はないであろう。だが脅威があるかぎり、今後とも核兵器を持ちたがる国は出てくるのだ。これをどう阻止するかが、今後の世界の大きな課題だ。

 ひるがえって台湾を眺めれば、領土にすれば中国大陸の約二百分の一で、日本の約十分の一という狭い範囲でありながら、海峡を挟んだすぐ近くから、原爆を持ち大陸間弾道弾を持ち、数百万の軍隊を持っている国の脅威をモロに受けている。この脅威は大きい。実は今から十年ほど前、一九八八年に台湾も核実験の数歩手前まで進んだことがある。このときアメリカがこれを知り、核不拡散というアメリカの原則により、種々交渉のすえ、台湾は核実験を排除することに同意した。台湾は核を持たないかわりに、台湾の安全はアメリカが守るということを、アメリカは事実上請け負ったのである。

 ということは、台湾に脅威を与えている中国大陸が、いかなる理由からであれ今日の台湾の民主主義体制を好ましくないと判断し、攻撃を加える事態に突き進んだなら、アメリカは台湾に道義的な核の傘を提供しなければならないのである。なにもこれは台湾に限ったことではない。多くの民主主義国にアメリカが同様の約束をしないかぎり、アメリカの核不拡散の原則は破綻するのである。今回のインド、パキスタンがその好例であろう。もしも台湾海峡で一朝有事のさい、アメリカが台湾を保護しなかったなら、そしてそういう先例をアメリカが作ってしまったなら、世界で最も有力な国民的合意が成立している日本ですら、自己防衛のため原爆保有の声が台頭するだろう。

 冷戦は過去のものになったとはいえ、世界はまだ力の根くらべの時代から完全に脱却してはいないのだ。だからアメリカが台湾の自由民主体制を擁護するということは、日本の核不装備にもつながるのである。そればかりではない。核実験を断念した台湾に対するアメリカのコミットメントが存在しないとしたなら、世界中の核不拡散の原則を受け入れた小さな国々が、自己防衛という本能があるかぎり、世界は核武装の時代に突入せざるを得なくなるだろう。

 日本の平和団体も、心情的に反核を唱えるのではなく、こうした現実面から反核を唱えるようになってこそ、反核のための有効な声を形成することができるのだ。
(CY)