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  台湾週報2170号(2004.12.9) - 台北駐日経済文化代表処 Taipei Economic and Cultural Representative Office in Japan :::
主要ニュース
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台湾週報2170号(2004.12.9)

APECで台湾の存在感示す 陳水扁総統が代表団の活動を評価  

2004年APECサンティアゴ会議では、経済閣僚会議には何美玥・経済部長と林全・財政部長が出席し、首脳会議には李遠哲・中央研究院院長が陳水扁総統の代理として出席した。これら代表団は鳥インフルエンザのワ クチン開発に具体的提議して参加各国の共鳴を得た。また李院長は小泉首 相や胡錦濤・中国主席と言葉を交すなど際立った活動を展開した。代表団 一行は11月25日、陳総統に会議内容を報告し帰国記者会見を行った。 

●APEC代表団帰国記者会見

 チリのサンティアゴで開催された二〇〇四年APEC首脳会議に李遠哲・中央研究院院長が陳水扁総統の代理として出席した。代表団一行は十一月二十四日夜帰国し、翌二十五日午前総統府において帰国記者会見をおこなった。 

このなかで李遠哲院長はまず「APECの主たる目標は各加盟国がそれぞれの経験や努力を通し、共同でアジア太平洋地域の繁栄と発展を促進するところにある。今年の会議の重点は、この地域での投資と貿易の円滑化を図るところにあった。APECは国際社会においてわが国が正式に加盟している主要な国際組織の一つである。わが国の参加が国際的に重視されるようになるためには、加盟各国にわが国の経済力と貢献したいと願う意志を十分に説明するとともに、具体的な貢献もしなければならない。まず第一は、加盟各国と長期的な投資と相互協力環境を構築することである」と、台湾にとってのAPECの重要性を強調した。 

 具体的貢献について李院長は「昨年のAPECにおいて、わが国はデジタル・デバイス(コンピューター普及の地域間格差)を取り上げ、アジア太平洋デジタル普及センターの設立を提議し、加盟各国の大きな反響を呼んだ。その後デジタル・デバイス問題を抱えた六カ国との協力関係が進み、それらの国々がわが国に二名ずつ専門家を派遣して研修を受けることになったが、これは大きな成果であった」と述べた。 

 今年のAPECについては「今回わが国は流行性疾病の予防対策の促進を提議し、特に鳥インフルエンザの予防対策について、参加各国の共鳴を得た」と語った。さらに李院長は「インフルエンザ予防接種のワクチン開発状況は現在理想的とは言えない。それらはいつどこで発生するか予測が困難であり、しかも発生は突発的であり、いずれの製薬会社も新型ワクチンの開発に二の足を踏んでいる。このため行政の支援が必要となっている。

わが国ではすでに六十億元(約百八十億円)の政府予算を組んでいるが、この努力は世界から高く評価されている。この措置により、わが国はインフルエンザの予防を外国に頼ることなく進められ、また開発の総量は国内消費量を越えているため、単価の引下げとともに外国を支援することもできるようになる。これは台湾が目下努力している点である」と説明した。

 APEC代表団のメンバーの努力については「私は団長として代表団のメンバー一人ひとりに感謝している。特に何美玥・経済部長と林全・財政部長の貢献には大きなものがあった。APECでは毎回、首脳会議の前に経済閣僚会議が行われるが、主要な懸案はすべてこの閣僚会議で論じ合われ、その過程で九カ国と二国間会談も行い、多くの問題が解決した。そうした努力があっからこそ首脳会議も順調に進んだのだ」と何部長らの労をねぎらった。 

また李院長は国内問題にも触れ、「私にとって今回は三回目のAPEC参 加になるが、毎回ながら加盟各国が長足に進歩していることを感じる。ひるがえって国内では政治的に不安定なことから、国民が一致団結して前進することができない状況にある。このことに大きな不安を感じる。立法委員選挙のあとは国民が冷静になり、経済発展と社会の安定、文化の向上に一致して努力することを望む」と語った。 

 さらに「今回のAPEC期間中、グローバル化に反対する人々が場外で抗議活動を展開していた。原因は急速なグローバル化が多くの不安を引き起こしているからだ。国際企業の関係者や学術界の人々は、グローバル化を歓迎しているが、自己の土地を黙々と耕している人々にとっては、グローバル化の利益を享受するには至っていない。世界がより一層密接に一体化する以外に、世界の人々が等しくグローバル化を享受する道はない。これについてラゴス・チリ大統領は、APEC加盟国が共に努力し、世界を一つの単位とし、国家の主権を超えて科学技術の交流を推進すべきだと提議したが、この案を多としたい」と述べた。

【総統府 11月25日】 

●陳総統が代表団を高く評価

 陳水扁総統と呂秀蓮副総統は十一月二十五日午前、総統府において二〇〇四年APECサンティアゴ会議代表団一行と会見し、今回の会議の報告を受けた。陳総統は李遠哲・中央研究院院長を団長とする代表団がAPECにおいて台湾の主張と存在感を十分に示したとして、一行のあげた成果を高く評価した。陳総統の言葉は以下の通りである。

○    ○    ○ 

 まず李院長が私に代わってAPEC首脳会議に出席して下さったことに感謝します。本年も私はAPEC首脳会議に参加できませんでしたが、李院長は私に代わってアジア太平洋地域の首脳と一堂に会し、この地域の安定と繁栄に貢献しようとするわが国の意志と決意を十分に示し、その責任を果たしてくれました。代表団各位も並々ならぬ努力をされ、台湾の主張と提議を遺憾なく示し、参加各国から重視されましたことを非常に嬉しく思います。

 APEC首脳会議は二十一日にとどこおりなく終了し、参加した二十一カ国が貿易と投資の自由化、ドーハ会議合意事項の促進、自由貿易協定締結奨励、反テロ行動と腐敗防止推進を宣言しました。同時に参加各国は、貿易と投資の自由化による各国の緊密化、人類の安全の促進、良好な管理制度と知識を基礎とした社会の確立、反テロ行動の強化、テロ分子による国際マネー・ロンダリングの阻止、エイズや鳥インフルエンザなど伝染性疾病の防止、人類の健康促進など、今後の努力目標を示しました。さらに共同宣言には、国際原油価格の慢性的上昇にかんがみ、エネルギー供給の安定とアジア太平洋地域の経済発展維持、ならびに腐敗が管理制度の致命傷となり、さらにそれが投資や経済発展の大きな障害となることから、腐敗汚職の撲滅が盛り込まれました。 

 台湾は本年特に、東南アジアに鳥インフルエンザが発生し、それが世界に流行して人類の健康と安全、さらに経済発展に重大な影響を及ぼす可能性があることから、ワクチンの研究開発と生産の強化を建議し、参加各国から高い評価を受け、そのことが共同宣言に盛り込まれました。これは台湾の国際社会に対する具体的な貢献を示しております。 

 このほか、日本の小泉首相が李院長にみずから台湾との文化、学術交流の促進を表明しました。これは注目に値します。また李院長は中国の胡錦濤・国家主席とも数回懇談し、台湾の善意を伝達しました。これは将来の両岸の良好な相互連動に必ず役立つと確信します。

 また、わが国代表団はロシア代表団と協議し、ロシアのWTO加盟協議書に調印しましたが、これは台露両国の経済における実質的関係推進にきわめて有益と確信します。さらにフィリピンとの二国間協議では双方の投資促進への意見と経験が交換されましたが、APEC加盟国やその他の国際社会は、台湾の誠意を十分に認識したものと思います。

 これらを成し遂げた代表団の方々に心より感謝します。

【総統府 11月25日】

台湾に実り多かったAPEC会議 小泉首相が台湾との交流拡大を示唆

 ●ロシアのWTO加盟に調印 

 チリでの二〇〇四年APECサンティアゴ会議の焦点の一つとして、ロシアのWTO加盟問題があった。これについて台湾代表団はAPECの場を活用してロシア側と二国間協議を進めた。この協議の中でロシアは、台湾が要求していたWTO加盟後のIT、鉄鋼、ボルト、ナットなど約三百項目にわたる関税の平均三分の一までの引き下げに同意した。このため十一月十九日(現地時間、以下同)に何美玥・経済部長とジャーマン・グレフ・ロシア経済貿易相がロシアのWTO加盟二国間協議書に署名した。 

 ロシアはWTO加盟のため各国との二国間協議を進めていたが、このうち台湾とは二〇〇二年以来三度の正式協議を重ねた。特に今年十一月三、四日のモスクワでの協議でロシア側は大幅な譲歩を示し、今回の署名に漕ぎ着けた。 

 経済部の統計によれば、昨年一年間の台露貿易総額は十六億百万ドルに達し、前年比三七・五%増で台湾の貿易総額の五・九%を占めるに至った。なお昨年の台湾の対露輸出は三億二百万ドルで、輸入は十二億九千九百万ドルであった。今年一~八月の貿易総額は十九億三千三百万ドルとすでに昨年一年間の額を超え、前年同期比九一・六%の成長となっている。今回の合意により、ロシアのWTO加盟後は台湾からの輸出が増え、台露貿易は大きく進展するものと見られる。 

 なお、台湾は「台湾・澎湖・金門・馬祖個別関税領域」の名義で加盟しており、今回の署名もこの名称が使われた。APECには「中華台北」の名で加盟している。 

 ●米国が中国に「自省」要求

 ブッシュ米大統領は十一月二十日午前、中国の胡錦濤・国家主席と個別会談をし、同日午後にパウエル米国務長官がワーカー・チリ外相と共同記者会見をしてこの内容を明らかにした。 

 それによれば、ブッシュ大統領は中国が台湾に照準を合わせたミサイルを多数配備していることに触れ、中国に「自省」を要求した。また胡錦濤が北京とワシントンが共同で台湾の独立運動を押さえ込むことを要求したのに対し、ブッシュ大統領は「米国は三つの共同コミュニケに示した『一つの中国』政策を基本としている。ただし米国は国内法である『台湾関係法』により、台湾に対し義務を負っている。台湾独立への行動は支持しないが、両岸問題は平和的に解決されなければならず、いかなる一方も平和を破壊する行為をとってはならない」と述べた。

 これについて呂慶龍・外交部スポークスマンは同日「ブッシュ・胡錦濤会談の内容は事前に台北に知らされており、米国は従来の立場を述べたにすぎず、すべて予想の範囲内であった」と表明した。 

 ●小泉首相が交流拡大示唆 

 陳水扁総統の代理としてAPEC首脳会議に参加した李遠哲・中央研究院院長は二十一日午後、首脳会議晩餐会の席で小泉首相と言葉を交した。この時、小泉首相は台湾人観光客のビザ免除措置を同意する旨を告げ、さらに日本と台湾の文化および技術交流の拡大を示唆した。 

 日本政府はすでに来年三月から始まる愛知万博の期間中、台湾人観光客に対するビザ免除措置を発表していたが、台湾はこれに対し、相互方式によって、日本も台湾が日本人旅行者に対するビザを免除しているように、台湾人旅行者の日本入国ビザを免除するよう要求していた。これが実現すれば、今後日台間の相互往来が拡大することは確実だ。

《台北『中央社』11月19~22日》

ニュース

国民党は党章を変更すべき 陳水扁総統が国民党に要求

 陳水扁総統は十一月二十一日、桃園県で開かれた選挙集会で演説し、国民党に対し国章とデザインが似ている現在の党章を三カ月以内に変更するよう求めた。「中華民国」の国章は「中華民国国旗」に描かれている「青天白日」であり、国民党の党章はこれと酷似している。

 陳総統はこの演説のなかで「現在はすでに二〇〇四年であり、一九二八年に『中華民国国章国旗法』が制定されて以来、国章が使われるようになったが、当時は軍政下で非民主の時代であった。したがって党章もこれに類似したものになった。国民党は、党と国家が同じといった古い観念を捨てるべきだ」と語った。これと同時に、民進党は「陳総統の談話の重点は、国民党の『党と国家は一体』とする考えは過去のもので、国民党に党章を変えてもらい、社会から『党国不分』の観念を除去するところにある」と表明した。 

 また陳総統は演説のなかで「国民党が応じるかどうかに関係なく、十二月十一日の立法委員選挙で与党が過半数を得たなら、二月一日からの新国会で国章法を改正し、国章のデザインを団体や政党が使うのを制限する予定だ」と発表した。 

 これに対し張栄恭・国民党スポークスマンは同日「国民党は党章の変更を断固拒否する。同時に国章の変更にも反対する」と、陳総統の要求を拒絶する意志を明確にした。同時に「国章は国家アイデンティティーの象徴であり、これを変更するとなれば国旗も変更することになり、台湾は分裂する」と語った。

《台北『自由時報』11月22日》 

都市間協力で北京が横ヤリ 台北が06年開催に優先権

 ジャカルタで十一月二十二、二十三日に開催された「アジア大都市ネットワーク21」(ANMC21)第四回総会で、台北市が二〇〇六年の第六回開催の優先権を獲得し、他の都市は開催地の立候補を控えることが決定した。この決定には、北京の横ヤリにより、一時紛糾する場面があった。 

 「アジア大都市ネットワーク21」は石原慎太郎・東京都知事の呼びかけで第一回総会が二〇〇一年十月に東京で開かれ、その後デリー、ハノイで開催された。参加都市は東京、バンコク、北京、デリー、ハノイ、ジャカルタ、クアラルンプール、マニラ、シンガポール、ソウル、台北、ヤンゴンの十二都市で、目的は人材育成、環境保護、観光振興、流行性疾病防止など共通のテーマについて意見交換し、相互協力の環境を造成するところにある。今年の総会ではSARSや鳥インフルエンザなど流行性疾病の発生時に都市間で直接情報を交換する体制の整備などが中心に話し合われた。 

 同総会の開催地については最初に名乗りを上げた都市を各都市が尊重するのが恒例となっている。台北市(馬英九市長)が今年七月に名乗りを上げたことから、来年第五回総会の開催地には台北市がほぼ決定していた。ところが北京が突然十一月十一日に名乗りを上げ、ジャカルタでの総会で台北開催に頑強に抵抗し、異例の投票となって北京七票、台北四票となり、いずれも規定の三分の二に達しなかった。そこで石原都知事が〇五年は北京で開催し、〇六年の開催地には台北が優先権を持って他の都市は立候補しないという折衷案を出し、各都市は了承した。ところがこれを宣言文に盛り込むことに北京が反対し、署名にも加わらなかった。馬英九・台北市長は中国のこうした頑迷ぶりと理不尽さに遺憾の意を表明した。また陳水扁総統は〇六年の台北開催について、馬市長の労をねぎらうとともに「中央政府は馬市長を全面的にバックアップする」と、政党の違いを超えて協力することを約束した。

《台北『青年日報』11月24日》  

国民党は党章を変更すべき 陳水扁総統が国民党に要求

 陳水扁総統は十一月二十一日、桃園県で開かれた選挙集会で演説し、国民党に対し国章とデザインが似ている現在の党章を三カ月以内に変更するよう求めた。「中華民国」の国章は「中華民国国旗」に描かれている「青天白日」であり、国民党の党章はこれと酷似している。  

 陳総統はこの演説のなかで「現在はすでに二〇〇四年であり、一九二八年に『中華民国国章国旗法』が制定されて以来、国章が使われるようになったが、当時は軍政下で非民主の時代であった。したがって党章もこれに類似したものになった。国民党は、党と国家が同じといった古い観念を捨てるべきだ」と語った。これと同時に、民進党は「陳総統の談話の重点は、国民党の『党と国家は一体』とする考えは過去のもので、国民党に党章を変えてもらい、社会から『党国不分』の観念を除去するところにある」と表明した。

 また陳総統は演説のなかで「国民党が応じるかどうかに関係なく、十二月十一日の立法委員選挙で与党が過半数を得たなら、二月一日からの新国会で国章法を改正し、国章のデザインを団体や政党が使うのを制限する予定だ」と発表した。 

 これに対し張栄恭・国民党スポークスマンは同日「国民党は党章の変更を断固拒否する。同時に国章の変更にも反対する」と、陳総統の要求を拒絶する意志を明確にした。同時に「国章は国家アイデンティティーの象徴であり、これを変更するとなれば国旗も変更することになり、台湾は分裂する」と語った。

《台北『自由時報』11月22日》
 

都市間協力で北京が横ヤリ 台北が06年開催に優先権

 ジャカルタで十一月二十二、二十三日に開催された「アジア大都市ネットワーク21」(ANMC21)第四回総会で、台北市が二〇〇六年の第六回開催の優先権を獲得し、他の都市は開催地の立候補を控えることが決定した。この決定には、北京の横ヤリにより、一時紛糾する場面があった。 

 「アジア大都市ネットワーク21」は石原慎太郎・東京都知事の呼びかけで第一回総会が二〇〇一年十月に東京で開かれ、その後デリー、ハノイで開催された。参加都市は東京、バンコク、北京、デリー、ハノイ、ジャカルタ、クアラルンプール、マニラ、シンガポール、ソウル、台北、ヤンゴンの十二都市で、目的は人材育成、環境保護、観光振興、流行性疾病防止など共通のテーマについて意見交換し、相互協力の環境を造成するところにある。今年の総会ではSARSや鳥インフルエンザなど流行性疾病の発生時に都市間で直接情報を交換する体制の整備などが中心に話し合われた。 

 同総会の開催地については最初に名乗りを上げた都市を各都市が尊重するのが恒例となっている。台北市(馬英九市長)が今年七月に名乗りを上げたことから、来年第五回総会の開催地には台北市がほぼ決定していた。ところが北京が突然十一月十一日に名乗りを上げ、ジャカルタでの総会で台北開催に頑強に抵抗し、異例の投票となって北京七票、台北四票となり、いずれも規定の三分の二に達しなかった。そこで石原都知事が〇五年は北京で開催し、〇六年の開催地には台北が優先権を持って他の都市は立候補しないという折衷案を出し、各都市は了承した。ところがこれを宣言文に盛り込むことに北京が反対し、署名にも加わらなかった。馬英九・台北市長は中国のこうした頑迷ぶりと理不尽さに遺憾の意を表明した。また陳水扁総統は〇六年の台北開催について、馬市長の労をねぎらうとともに「中央政府は馬市長を全面的にバックアップする」と、政党の違いを超えて協力することを約束した。

《台北『青年日報』11月24日》

中国原潜の侵犯は台日共同の脅威 台日は危機感共有し、有事への備えが必要  

 許世楷・駐日代表は十一月二十四日、日本の民主党有志議員でつくる日本・台湾安保経済研究会に出席し、さきの中国の原子力潜水艦が日本領海を侵犯した事件に触れ「台日共同の脅威である」と指摘し、両国の安保の重要性を強調した。講演ではまた、来年の新幹線開通に伴う日本側の協力を求めたほか、台日の自由貿易協定(FTA)締結への期待を語った。以下はその要旨である。 

     ○      ○      ○ 

一、中国原潜の侵犯事件について

 台湾と日本の安全保障の問題は今別に何かあるというわけではないが、先取りして考えなければ、いざという時に間に合わない。さきの中国原潜の問題で、陳水扁総統は服部禮次郎・交流協会会長との会見の席で台湾が日本と米国へ関連情報を提供したことを明らかにし、台日双方が同じ脅威にさらされていることを強調した。これについては日本と台湾の双方のメディアが報道したが、ここで重要なのは、誰が誰に情報を伝えたかということではなく、台湾と日本が同じ脅威にさらされているということである。このことは、将来のアジア・太平洋地域の安定と安全について、十分に考えなければならない点である。 

 二、FTA問題について

 日本はシンガポールとFTAを締結済みで、現在はマレーシアや韓国などとの締結を検討されているようだが、なぜか台湾の名前は挙がらない。これは中国の圧力が関係している。このほどチリのサンティアゴで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)の共同声明にも、FTAの締結促進が謳われた。さらに世界貿易機関(WTO)においても、各加盟国が早期にFTAを締結するよう勧めている。台湾はWTOの正式メンバーであり、APECにも李遠哲・中央研究院長が出席した。つまり、環境的にFTA締結が奨励されているのであり、台湾にもその資格があるはずだが、中国の圧力のために困難な状況にある。これは理不尽なことであり、ぜひ何らかの形で台日のFTA締結問題を取り上げてほしい。 

 三、来年の新幹線開通について

 台湾の高速鉄道は当初、日本の新幹線ではなくフランスの車両を採用することに決まっていた。しかし、日本の技術の高さと、良好な台日関係促進の観点から日本に変更したという経緯がある。つまり新幹線は台湾と日本の親密な関係の象徴であり、日本にとっては新幹線の海外輸出の突破口にほかならない。その新幹線の開通式に日本側から誰が出席してくれるだろうか。普通なら首相が出席してもおかしくないが、台日には正式な国交がない。しかし台湾側は非常に期待している。どうか皆さん方にも協力をお願いしたい。 

   ○     ○     ○

 講演の後、民主党議員からいくつか質問が出され、このなかで中国の原潜事件について「日本は首相補佐官を訪台させ、海上の安全について政府間協議をしてもよかったと思う。台湾はこうした問題で政府間協議を進める準備があるか」との質問がなされた。これについて許代表は「台湾はそうしたことをずっと望んでいる。現在いろんなチャンネルがあり、陳水扁総統が今回情報を提供できたのもその一つだ。しかし日本は情報提供だけでも中国の圧力を懸念する状況であれば、無理な部分があるだろう。むしろこの問題をこうした研究会などで取り上げてほしい」と語った。 

 また日本の中国に対する政府開発援助(ODA)について「そろそろやめてもいいのではないか」との意見が出されたのに対し、許代表は「ODAについては台湾は不満がある。中国は現在およそ五百基ものミサイルを台湾に向けているが、実を言えば、それらもODAが使われているのではないかという疑問さえある。欧州議会がこのほど中国に対する『武器輸出禁止解除案』を否決したが、その理由の一つにこうした中国のミサイル配備もあったと思う」と述べた。 

 民主党の有志議員でつくる日本・台湾安保経済研究会は今年五月に発足し、現在衆参合わせて約五十名がメンバーとなっている。許代表の講演後、台湾の民主化と自由化を支持し、そのさらなる発展に貢献するとして、以下の決議を行った。 

一、台湾の憲法、国名については台湾の民意を尊重し支持する。
二、台湾のWHO加盟を支持する。
三、李登輝前総統の訪日を実現する。
四、台湾観光客のノービザ入国を実現する。
五、外国人登録証における在留台湾人国籍の「台湾」への表記変更を実 現する。 

〈取材:本誌編集部〉

台湾ハイテク産業の新たな希望 南部科学園区の現況

 世界経済フォーラム(WEF)が発表した二〇〇四年上半期の成長競争力ランキングで、台湾は世界第四位、アジアではトップの座に着いた。英国EIU(Economist Information Unit)ではまた、二〇〇三~七年までの五年間における国と地域の経済環境に関する最新の予測を発表したが、台湾の経済環境に対する評価は、最上級レベルの「極めて良好」であり、世界第十七位、アジアでは第三位となっている。 

 台湾の国際競争力が絶えず高まるなかで、台湾経済の要ともいえるハイテク産業のさらなる飛躍を目指し、南部科学工業園区(南科)は一九九六年、新竹、中部に続く第三の科学園区として台南市新市郷に誕生した。ここに、南科における投資の現況を報告し、とくに日本企業の進出状況について解説する。

一、南科開発の現況

●位置 科学園区として最南端
●面積 すでに開発されている台南園区一、二期(土地面積約一○三八   ヘクタール)および高雄園区(土地面積約五七一ヘクタール)を   合わせた計一六〇〇ヘクタールで構成されている。
●借地状況 
三園区の工業用地面積合計七〇一ヘクタールのうち、現時点ですでに九割近い六一四ヘクタールが借上げ済みである。 
●進出企業数と売上高 
二〇〇四年十月時点で百五十一社、
 うち約六十社が量産を開始しており、約二十社が工場建設中である。 昨二〇〇三年の売上高は千五百五十三億元(約四千七百億円)、〇四 年は倍の三千億元(約九千億円)になると見込まれ、従業員数は〇四 年九月時点ですでに三万人を超えている。 

●産業の集約 

 現在、南科に進出している六大産業は①光電(オプトエレクトロクス)②精密機械③バイオテクノロジー④半導体⑤通信⑥コンピュータ周辺機器であるが、このうち奇美電子、ハンスターなどをはじめとする光電産業、TSMC(台湾セミコンダクター)、UMC(聯華電子)をはじめとする半導体産業、そしてバイオテクノロジー産業については、左記の通り、すでに産業集約の構造が形成されている。

 これら大企業の南科進出が磁石のように川上、川下そして周辺業者を引き付け、これにより企業は互いに便利なサービスを享受し、生産と輸送のコストやリスクの低減を望むことができる。それはひいては産業全体が利益を受け、国際競争力アップにつながる。

●研究開発型園区 

 産業の継続的発展を目指し、南科では工業研究院分院、高速ネット・計算センター、チップシステムセンター、ナノ・デバイス実験室、中央研究院バイオ実験センターなどの進出を誘致し、すでに国際レベルの実験室グループを形成している。成功大学や中正大学などの教育機関も研究開発センターを設立している。  

二、今後の展望

 ●液晶テレビ専用区と通信技術センターの設置 

 現在、南科にはすでに規模としては世界一を誇る光電専用区が形成さ れている。今後奇美電子やハンスターなど大手企業が工場拡張を予定 しており、液晶パネルの生産が最高潮に達すると見られている。光電 産業の不断の拡張と周辺産業との連携の必要性に対応するため、南科 管理局では経済部工業局や台南県と共同で、南科周囲に特定地域を開 発し、液晶テレビ専用区とする予定だ。

  また、交通部は南科高雄園区に通信技術センターの設立を決めてお り、今年五月にはすでに準備事務所を園区内に開設している。通信技 術の研究開発や教育訓練をおこない、将来的に通信産業の集約地とな ることを目指す。 

 ●バイオテクノロジー核心地区 

  南科には国際的農業研究所や農業委員会畜産試験所をはじめ、バイ オ産業の集約に適した地の利がある。園区のうち、高速鉄道の沿線四 十五ヘクタールをバイオ回廊として計画し、また別に八ヘクタールを 核心区域に指定する予定だ。

 ●企業の進出促進

  二〇二〇年までに進出企業数四百社、従業員数十八万人を目指す。 このほか、南科では、国際会議場やネットワークセンターを有する世 界貿易センター設立、外国語専門学校および従業員住居エリアを有す る国際村の建設、運動公園など福祉施設や国立史前博物館台南館の建 設などを予定している。

三、南科における日本企業

  南科に進出している日本企業は左表の十社で、投資総額は二八・六 億元(約九十億円)、毎月の売上高は約三億元(約九億円)である。 南科で働く日本の専門家、経営者は百三十九人、台南―日本間を行き 来する流動人口は毎月平均約五百人に上っている。

 南科は台湾の液晶ディスプレイ産業が集約する拠点であり、このうち 奇美電子、ハンスターの大手ディスプレイメーカー二社が日本企業と の技術交流が盛んだ。とくに奇美の許文龍氏は、近年さらに、日本企 業の南科投資を促している。 

 ●駐在員への各種サービス 

 南科においては外国企業に対するサービスとして、登録・審査手続き の一本化を図り、園区内には住居、小中学校、百貨店や書店、カフェ などを完備するほか、駐在員のための各種関連組織も設立している。 この二〇〇四年には「外国企業委員会」のほか、「日本企業婦人読書 交流会」が設立され、日本企業の駐在員夫人が台南に親しめるよう、 市内古跡めぐりなど各種活動をおこなっている。また「日本企業交流 会」が設置され、日本の駐在員に関する共通の問題検討や、福利措置 の推進を目的に不定期で講演会などを開催している。二〇〇七年には、日本村も完成する予定だ。

【南科園区管理局 11月20日】  

週間ニュースフラッシュ 

 ◆欧州議会が対中武器禁輸措置継続を可決
 欧州議会は十一月一七日、「EU行動規則」に基づき八九年の天安門事件以来とっていた対中国武器禁輸措置を、人権問題に改善が見られないとして継続する案を可決した。
《台北『自由時報』11月19日》 

◆馬英九・台北市長が国民党主席は党員選挙でと主張
 馬英九・台北市長に近い筋によると、馬市長は来年三月の国民党主席改選は党員選挙で決定すべきと主張し始めた。この主張は、三月の総統選挙のあと、対応をめぐって連戦主席と馬市長の間に亀裂が生じているのが原因と見られる。
《台北『中国時報』11月19日》  

◆陸委会が中国に春節チャーター便交渉に応じるよう催促
 劉徳勲・行政院大陸委員会副主任委員は十一月十九日、中国に対し来年春節(旧正月)の両岸直行チャーター便運航交渉に早く応じるよう要求した。
《台北『青年日報』11月20日》  

◆日本領海侵犯の中国原潜は十一月初旬から台湾が追尾
 日本が領海を侵犯した中国原潜を発見したのは十一月十日朝とされているが、国防部は十一月十九日、十一月初旬に台湾北東部水域を潜航している不審原潜を対潜哨戒機S―2Tが発見し、艦艇を急派し追尾を続けたのち、日米に情報を提供したと発表した。
《台北『中国時報』11月20日》

◆来年の国民総生産(GNP)初の十兆元(約三十兆円)突破か
 行政院主 計処は十一月十九日、今年の経済成長率は五・九三%、来年は四・五六%となり、特に来年はGNPが十兆五千八百億元(約三十二兆円)と史上初の十兆元台に乗り、国民一人当たりGNPは一万四千九百六十一ドルになる見込みだと発表した。
《台北『青年日報』11月23日》  

◆台湾との国交変更ないとバヌアツ首相語る
 十一月三日に中華民国(台湾)と南太平洋のバヌアツ共和国が国交を結んで以来、中国が強硬な横ヤリを入れているが、ボオール・バヌアツ首相は十一月二十三日、両国の国交に変化はなくバヌアツ政府の立場は一貫しており、そこになんらの変動もない」と改めて表明した。
《台北『青年日報』11月23日》

◆十月の失業率四・三一%に抑える
 行政院主計処は十一月二十二日、十月の失業率は過去四十カ月来最も低い四・三一%になったと発表した。また一~十月の失業率は前年同期比〇・五六ポイント下がり四・五〇%となった。主計処では行政院の目標であった年間四・五〇%まで引き下げるのは実現できると表明した。
《台北『経済日報』11月23日》  

◆十月の海外からの受注額過去最高
 経済部は十一月二十三日、台湾企業の十月の海外受注額は単月過去最高の二百二億五千万ドルで前年同月比二五・四六%増になったと発表した。このうち製造業の増加率は三%と低く、海外生産が拡大した影響と見られる。
《台北『経済日報』11月24日》 

◆憲法改正は内政問題で外国の干渉は受け入れられない
 游錫堃・行政院長は十一月二十四日、外国メディアに対し「台湾の憲法改正は内政問題で、外国の干渉は受け入れられない。中国も台湾も共に主権独立国家であり、それぞれの選択権を持つ」と語った。
《台北『中央社』11月25日》 

◆台湾元と人民元の両替を地域限定で解禁
 中央銀行は十一月二十五日、金門島と馬祖島に限定し中国からの観光客に対し台湾元と人民元の両替業務を解禁し、一定の試行期間を経て認可地域を拡大していく方針を明らかにした。
《台北『工商時報』11月25日》

台湾観光年

「二〇〇四台北トラベルフェア」盛況のうちに幕 

 東南アジア最大規模の観光イベント「二〇〇四台北トラベルフェア」が十一月十八日~二十一日、台北の世界貿易センターで開催され、期間中およそ十一万四千人が参観し、出展規模、内容ともにこれまでの最高となり、盛況のうちに幕を閉じた。 

 十二回目を迎えた今年は、世界五十五の国・地域から政府関係者、航空、ホテル、旅行などの観光業者およそ二千二百五十人が参加し、出展ブースは七百二十個に及んだ。会場には「台湾」「アジア太平洋」「欧米・アフリカ・中東」「航空業者」「ホテル」「旅行社」「青年ツアー」の各ゾーンが設けられ、外国のブースのなかで最も規模の大きかったのは日本で、合わせて六十九個のブースが出展した。また今年は、長い間フェアに姿を見せなかった英国をはじめイタリア、フィジー、ヨルダン、イスラエルが久しぶりに顔を揃えたほか、メキシコ、アルゼンチン、エジプト、スロバキアは今年初めて出展し、注目を集めた。さらに十八日と十九日には「エコツアー」と「青年ツアー」をテーマにシンポジウムが開かれた。

 インターネットが普及するにつれ情報をネットで入手することもますます便利になっている。今年はネット上でもさまざまな旅行情報が紹介され、人々のニーズを満足させるものとなった。

《台北『民生報』11月22日ほか》

屏東の魅力満載「新観光パスポート」が発行 

 屏東の観光施設の入場料が無料となるほか、格安で温泉や観光を楽しめる「新屏東観光パスポート」がこのほど発行された。

 このパスポートを持参すると海洋生物博物館、瑪家郷原住民文化生態園区、懇丁八大森林楽園、懇丁水世界など屏東の六カ所の観光施設の入場料が無料となるほか、高雄駅―懇丁間の往復交通費や大鵬湾海洋観光園、後壁湖の周遊などが割安になるサービスもついている。さらにホテルの宿泊やレストランのクーポン券もついて、一冊九百九十九元(約三千円)で販売されており、有効期限は来年末までとなっている。

 このほか、懇丁地域に限定した「懇丁パスポート」もこのほど発行され、こちらは主にレストランのクーポン券とプレゼント交換が中心で、一冊九十九元(約三百円)で販売されている。

《台北『聯合報』11月16日》

林志玲さんが親善大使に 

 日本の国土交通省は、日本を訪れる外国人観光客倍増計画「ビジット・ジャパン・キャンペーン」(VJC)の一環として、台湾のモデルで女優の林志玲さんを親善大使に任命した。

 林さんは英語、日本語に堪能で、今年七月から台湾で放送されている日本の観光番組の司会者を務めている。十一月二十四日、国土交通省で任命式が行われ、北側一雄大臣から任命状が渡された。林さんは「日本は歴史や文化が多く保存され、自然が美しい」と魅力を語った。

《台北『民生報』11月18日ほか》

台湾初の「レンガと瓦の文物館」 

 レンガはどうして赤いの? 瓦はどうやって作るの? レンガ彫刻ってどんなの? こんな問題に即座に答えてくれるのが「湾麗磚瓦文物館」だ。館内には図書館や研究室、インフォメーションルーム、工作室、DIY教室が設置されている。レンガや瓦に関した文献、国内外で生産されたレンガと瓦、レンガ彫刻などを収蔵し、その歴史や文化的背景、芸術方面のことを紹介しているほか、付近の観光スポットを組み合わせたコースも用意しているので勉強になり、また楽しい一日コースとなる。

《『台湾観光月刊』11月号より転載》

最近の台湾の書店・出版事情
簡体字書籍専門店が登場、台湾の書店がアジア№1に

 ●簡体字書籍専門の書店が登場 

 台湾では長い間大陸の簡体字書籍を見ることが禁じられていたが、それもひと昔以上前の話で、いま台北市では簡体字書籍を専門に扱う書店が登場し、人気を集めている。

 台湾大学と師範大学の近くにそれぞれ書店を開いている「問津堂」は簡体字書籍を専門に扱っており、その数は二万種を数える。主に文学、歴史、哲学などの学術書が中心で、海外の翻訳書も豊富に揃っている。 

「大陸の学術書の出版の多さには驚くばかり。政治イデオロギーは置いといて、情報を取得するという視点から見れば、相手がたとえ敵だとしても、相手を知り自分を知る努力は必要」と語るのは、この店のオーナー方守仁さんだ。高校時代、台北の牯嶺街や重慶南路の書店街に通いつめ、大学時代には書店でアルバイトをし、卒業後は中学校の教師を十九年間務めたあと出版の世界に飛び込んだ。当初から大陸の出版物に注目し、何度も大陸に足を運び現地に事務所を構え、出版社や作者と直接交渉し、版権を取得してみずから書店を開くまでに発展させた。その背景には、現在大陸で日々大量の出版物が発行されている事情と、台湾の簡体字書籍の輸入手続きが簡素化されたことなどが挙げられる。 

 「問津堂」にやってくる客は教師、大学生、学者が多く、なかには大陸を懐かしむ外省人も少なくないという。いまや台湾で堂々と簡体字書籍の看板を掲げられるご時世になったとは言え、現実に店を開くには路地裏の小さなスペースで営業するしかないのが実情だ。 

●ネットでも気軽に書籍を注文

 店舗スペースの不足を補い、簡体字書籍をより広く知ってもらおうと「問津堂」はオンラインショッピングも行っている。ネット上で書籍を販売している「博客来」と提携し、同社のHP上に「簡体字館」のコーナー(http://www/books.com.tw/china)を設け、およそ一万種類の簡体字書籍を販売している。利用者の便宜を図るため、書籍を検索する際、繁体字でキーワードを入力しても繁体字、簡体字の両方で関連書籍が表記されるほか、価格も人民元と台湾元の両方明記されており、レートは平均四~五・五となっている。ネット上での注文は基本的には世界各国受付けており、台湾で注文する場合は早くて四日後に近くのコンビニで代金を支払い、注文の書籍を受け取れる仕組みとなっている。 

 簡体字書籍の平均価格は一冊百元(約三百円)余り。「問津堂」では囲碁や書道のテキストなども揃えており、それらは一冊二十元(約六十円)と格安だ。語学書や辞書類、中国医学書も人気で、軍人の客は『孫子の兵法』を買って帰る人が多いという。 

 現在、台湾における簡体字書籍の販売高は年間六億元(約十八億円)で、書籍市場全体の一割を占めるに過ぎない。「問津堂」では「大陸の方が充実している科学書を今後多く輸入し、台湾の読者の参考になれば」と語っている。

《台北『民生報』11月10日》

●誠品書店がアジアベスト1に 

 最近出版された『TIME』アジア版の特別企画「アジアのベスト」と題した記事のなかで、世界の観光客が選ぶアジアで最も優れた書店のナンバーワンに、台湾の誠品書店が選ばれた。

 誠品書店は今年創立十五周年を迎え、国内に四十九の支店をもつ台湾を代表する大型書店だ。外国人観光客が台北に来て必ず立ち寄る場所の一つであり、その理由として挙げられているのが「洗練された文化的雰囲気と、書籍に対する優れた解釈」だ。単に多くの支店を持つ大型書店というに止まらず、さまざまな文化イベントを創造し展開するクリエイティブ産業の中核として国内でも評価されている。台北市敦化南路店の二十四時間営業も誠品書店の魅力を支えており、深夜の利用客は平日でも二百人、休日にはその倍に上り、同書店は今年初めて黒字経営となった。海外での評価を盾に、今後は海外の書籍をより広く深く掘り下げ、誠品書店の世界観を打ち出したいとしている。

《台北『民生報』11月19日》

文化ニュース 

台湾の古地図を日本で修復 台湾最古のカラー地図

 国立台湾博物館の宝として珍重されている「康煕台湾輿図」が、長い年月が経ち破損が目立ってきたため、このほど日本に修復に出された。 

「康煕台湾輿図」は一八世紀末、清朝時代に描かれた台湾の地図で、当時の台湾の風土を研究するうえで貴重な資料とされている。 

 全長が五百六十五センチ、幅が六十九センチあり、台湾博物館の李子寧主任によると、これ以前にも台湾地図は描かれたことがあるが、多くは局部的に描かれ、台湾全土を網羅し、しかもカラーで描かれたものとしては、現存するなかで最初の地図であるとしている。 

 しかし、地図とは言いながら、作風は中国の伝統的な風俗画を踏襲しており、台湾西部の山川や地形、兵備や人びとの生活状況が描かれており、おそらく軍事用の地図であったと見られている。

 李主任によると、清朝時代には康煕だけでなく雍正、乾隆にも台湾地図が描かれたが、歴史的に見て康煕地図が最も価値が高いという。

 「康煕台湾輿図」はもともと清朝府内に保管されていたが、一九〇〇年に日英米など八カ国からなる連合軍が北京を攻略した「義和団の乱」の際に流出したとされている。

 台湾に残されているのは日本統治時代、この「康煕台湾輿図」を基に複製されたもので、それも年月が経ち、下地の絹がほつれ、線が曖昧になるなど、破損が目立ち始めていた。

 修復は日本の専門家に依頼し、およそ五百万元(約一千五百万円)かけて、来年の末ごろに完成する予定である。

《台北『聯合報』10月21日》

台湾文学館が創立一周年 台湾文学の各種資料を収蔵 

 台湾文学に関する資料を専門に扱う図書館として昨年十月、台南市にオープンした「台湾文学館」が創立一周年を迎えた。

 「台湾文学館」は、国の史跡に指定されている、かつての台南州庁の建物の一部を改築して建てられた。一般市民に開かれた図書館の機能にとどまらず、台湾文学の研究や資料収集の拠点としても位置付けられている。 

 この一年間に行われた特別展示は十六種類、座談会は七十回に及び、五回のテーマイベントと台湾文学キャンプなども開催され、参観者数は四万人を超えた。またこの間、一般市民から寄せられた台湾文学に関連する資料は六万点以上にのぼり、それらを閲覧する部屋が設けられている。

 創立一周年目にあたる十月十七日には、作家の葉石濤氏と鍾肇政氏を招き、同館で記念式典が行われ、陳水扁総統も出席しこれを祝った。現在、同館では「作家の群像」と題し、二十三人の作家の素顔を写真に収め展示している。来年は「台湾文学の発展」と「旧建築の新生命」の特別展などが予定されている。

●台湾文学館http://nmtl.ncrpcp.gov.tw

《台北『民生報』10月18日》 

盲導犬の国内での訓練始まる 第一号が誕生、任務を開始

 台湾で訓練された初の盲導犬が十月下旬、誕生した。この盲導犬はニュージーランド生まれのラブラドール「欧文」で、生後まもなく台湾に連れてこられ、四カ月間一般家庭で飼育されたあと、八カ月間専門の訓練を受けた。「欧文」は他の盲導犬と異なり、台湾の環境を熟知しており、英語と中国語両方を聞き取ることができるという。 

 台湾に初めて盲導犬が導入されたのは今から八年前で、柯明期さんが日本に出向き、一カ月間犬と生活しながら専門の訓練を受け帰国した。台湾ではこれまで盲導犬を訓練する専門の施設と人材が不足していたためで、日本や米国、ニュージーランドに頼りきりだった。 

 こうしたなか「台湾盲人重建院」が昨年から本格的な盲導犬の訓練に乗り出し、このほど第一号が誕生した。「欧文」はすでに視覚障害者のもとでパートナーとしての任務を始めている。

《台北『中国時報』10月22日》 

台中産ポンカン、日本市場拡大へ 十二月に一万五千三百箱が輸出

 フルーツ王国、台湾。最近は、台南のマンゴーやバナナなど、積極的に日本市場の再進出を図っている。台中産で有名なポンカンも、今年の輸出時期が迫り、台中県ではこれに合わせたプロモーション活動をスタートさせた。 

 今年の日本向け輸出は、十二月に一万五千三百箱が決まっており、台中県では同十六日に、各卸売り店、スーパー、経済関係メディアや日本東京台湾同郷会などを招き、台中産ポンカンの販促宣伝会を東京都内で開催する予定だ。

 また台中県ではこれに先駆け、十一月二十一日、輸出代理店の青果社台中支店と共同で記者会見を開き、台中ポンカンの品質をアピールした。黄仲生・台中県長は「台中県には豊原、石岡をはじめとする千五百九十六ヘクタールに及ぶポンカンの栽培地がある。年間生産量は約三万四百十三トン、生産高はおよそ五億一千万元(約十五億三千万円)に上り、台湾全体の三分の一を占めている」と述べ、「台中ポンカンは甘さと酸味のバランスが絶妙だ。国内でも定評があるほか、海外輸出もおこなっており、海外在住華僑からの人気も高い」とアピールした。 

 台中県では一九七七年から毎年日本へポンカンを輸出しており、最近は日本産みかんの品質改良により需要が鈍っていたが、今年は昨年より六千箱の増加となった。黄県長は「食感や外観など、日本みかんとは違うポンカンの魅力をもっと知ってほしい。そのために今後も品質アップは必須課題だ」と述べ、さらなるシェア拡大への意気込みを見せた。

《台北『中央社』11月22日》

台北・多摩動物園が友好園に 来年レッサーパンダも来園

 来年、日本からレッサーパンダが台北にやってくる。台北市立動物園はさきごろ、東京都立多摩動物公園と友好協定を結んだ。今後は研究報告や技術交流を密におこなうほか、多摩動物園からはこれを記念し、来年レッサーパンダ一対が市立動物園に寄贈される予定だ。

 多摩動物園は東京郊外にあり、面積五十二ヘクタール、世界最大の昆虫館や開放式野生動物エリアなどを持つ日本最大の動物園だ。陳宝忠・市立動物園園長は「共同研究や専門知識の交換など、関係緊密化を図りたい」と今後の交流に期待している。 

《台北『中国時報』11月13日》

「台湾投資セミナー」が盛況 投資環境、展望を仔細に紹介

 台湾投資を考える日本企業に、台湾の産業経済の状況や投資環境を紹介する「台湾投資セミナー」が、経済部投資業務処主催、株式会社野村総合研究所台北支店の共催により、十一月十五日、東京都内で開催された。

 同セミナーは経済部投資業務処と野村総合研究所台北支店がおこなう「ジャパンデスク」活動の一環として、毎年日本で開催され、今年で五回目となる。開催にあたっては、台北駐日経済文化代表処経済部から高榮周部長も出席し、同セミナーの開催が台湾投資の好機となることを期した。 

 セミナーでは、多くの受講者が投資に関する仔細な情報に聞き入った。野村総合研究所の川嶋一郎・台北支店長は「中台経済関係と在台日系企業の動き」と題した講演をおこない、日台間の渡航者数の多さ、貿易関係の緊密さを改めて提示した。それによれば、「台湾在住外国人のホワイトカラーの半分は日本人で、日本を訪問する外国人の一六%が台湾人(国別第二位、観光客数では第一位)」だという。また貿易に関しては、日本にとって台湾は四番目、台湾にとっては米国、中国と並ぶ最大貿易相手国のひとつであり「これらの数字から見ても、台日関係は、日中の関係より遥かに濃いと言える」と述べた。 

 日本から台湾への投資は、六〇年代に輸出加工基地としての投資が始まり、八〇年代の高度成長期にはデパート、外食産業がこぞって進出した。その後、九〇年代以降は研究開発や中華圏市場のテストマーケティング機能など、新たな役割を持つ投資拠点へ変化しているという。 

 さらに、中国経済の台頭と台湾企業の関係に触れ、「例えば世界第三位の生産量を誇る中国のIT産業では、中国で生産されているうちの七割が台湾系企業によるものだ。中国経済は実際には台湾企業が動かしている」と指摘した。川嶋氏は「台湾と中国のどちらに投資したらいいかと悩む時代は過ぎた。今は中華圏という『面』で捉えることが肝要」と強調した。 

 一方、日本公認会計士でトーマツ台北駐在員の沖敦氏は、「進出手続きと税制概要」というテーマで、実際の投資計画から実現までのプロセスを紹介した。台湾の投資規制と事業形態、進出形態選択のポイントを解説し、各種優遇措置、社員の手当てや福利厚生、決算や税金関係など、具体的なノウハウを詳しく説明した。講演後の質疑応答でも、所得税やビザ申請などについて熱心に聴く受講者があり、沖氏は適切なコメントで応対した。講演終了後には、個別相談会も行われ、各企業がそれぞれの状況に合わせてコンサルタントを受けた。 

※「ジャパンデスク」概要

 日本企業の台湾進出をサポートする窓口として、一九九五年七月に経済部が設立。

 経済部、政府関連機関、主要工業会および野村総合研究所台北支店が一体となり、台湾進出を検討している日本企業や、すでに台湾に進出している日系企業に、幅広いサポート活動を無料でおこなう。設立以来、毎年二百社以上の企業から台湾進出に関する相談を受けている。

 主な活動内容は①E-mailによるニュースレター(台湾投資通信)の発行②ホームページによる情報提供、③台湾での事業活動や賃金・労働事情などに関する各種アンケート調査の実施、④台湾投資セミナー実施、⑤各種コンサルティングサービス等。

Eメール:japandesk@nri.co.jp
ホームページ:http://www.japandesk.com.tw
(取材:本誌編集部 葛西)

お知らせ

第56回新日台交流の会

日 時 12月18日(土)午後3時~
テーマ 王育徳氏のドキュメンタリーからみる台湾の歴史
会 場 台湾資料センター3F会議室
※参加無料。電話で事前申込要、定員40名
共 催 台湾映画研究会
連絡先 台湾資料センター
TEL03(3444)8724
http://www.roc-taiwan.or.jp/data/index.html

日台フォーラム「先住民文化と現代」

台湾の先住民作家を日本に招き、日本の学者らと「先住民文化と現代」をテーマに、講演と座談会が行われます。 

日  時 12月11日(土)午後1時半~6時
会 場 東京・家の光会館7Fコンベンションホール(東京都新宿区市谷船河原町11 TEL:03-3260-4791)

講演内容 

〈台湾側〉シャマン・ラポガン(作家)「船乗りの話」、リカラッー・アウー(作家)「動乱の時代」、呉豪人(輔仁大学助教授)「野蛮と文明の弁証」

〈日本側〉小田実(作家)「今まさに考えること」、知里むつみ(アイヌ文化研究家)「『アイヌ神謡集』から日本社会を見る」、青柳文吉(北海道文学館学芸員)「忘れられた『北方』先住民族」

コメンテーター 神谷忠孝(北海道文教大学教授)、下村作次郎(天理大学教授)
司 会 西田勝(文芸評論家)、黄英哲(愛知大学助教授) 
主催・問合せ 植民地文化研究会 TEL:047-381-4595
後 援 交流協会、行政院文化建設委員会、朝日新聞社
参加費 千円

春 夏 秋 冬

 中国の原子力潜水艦の日本領海侵犯事件は、日本の社会に中国の実体を見つめるよう促すのにいい材料になったのではないか。陳水扁総統も服部礼次郎・交流協会会長との会見で、日本に早くから中国潜水艦の情報を提供していたことを明らかにするとともに「日本は台湾が感じているのと同じように、中国の脅威を感じていると信じる」と語った。この言葉通り今回の領海侵犯で日本社会の中国への警戒心は強められたものと思う。実際はもっと早く気付き、それなりの政策をとっていなければならなかったことなのだ。

対中ODAの問題が、その主要な一つである。今年8月に参議院はODAについて中国やブラジルなど6カ国への派遣調査をおこない、11月に報告書をまとめた。その結論と言うべき「派遣議員団としての所見」は「対中国ODAを引き続き推進することの必要性は見当たらなかった」「廃止をも視野に入れ、縮減すべき」と指摘するものだった。妥当な所見だと思うが、まだ生ぬるい。

 中国商務省が11月12日に発表した「2004年対外貿易白書」によれば、今年の中国の貿易総額は日本を追い抜き米、独に次いで世界第3位となる。しかも中国は経済発展のスピード以上に軍事費を増大させており、特に海空軍の増強には目を見張るものがある。それに加え、愛国主義と称した反日・抗日教育の強化まで進めているのだ。これらを勘案した場合、調査に参加した議員から「ODAによって浮いたカネが軍事や宇宙開発に回されている」(鴻池祥肇議員・自民)と指摘する声がでるのは当然と言えよう。

 ODAの目的が「国際社会の平和と発展に貢献し、日本の安全と繁栄の確保に資する」ことであってみれば、対中ODAの継続はまったく目的に反した行為と言わねばならないのではないか。町村外相は対中ODAについて「どこかの時点で(被援助国を)卒業していただく時期が当然くる」と、打ち切りの姿勢を示している。その時期は2008年の北京オリンピックか2010年の上海万博のころと思われるが、ここで宇宙開発の分野でも有人衛星を成功させるなど、日本に数歩先んじたことに目を向けてみたい。

 日本は対中ODAを打ち切るだけでなく、逆に宇宙開発の資金援助を中国に仰いでみてはどうだろう。いただいた資金を、中国のミサイルを防ぐためのTMD開発の費用に回すのである。ブラックユーモアと受け取っていただいても結構だが、本コラムはいたってまじめにそんなことまで考えている。(K)