陳水扁総統がチベットのデモを武力鎮圧した中国を非難
陳水扁総統は3月15日午前、台湾南部の高雄および嘉義を訪問し、このなかで陳総統は同14日に中国チベット自治区・ラサで発生したデモ武力鎮圧事件に関して言及した。
陳総統は、1951年3月10日のチベット蜂起を記念する平和的なデモ活動が、中国の軍や警察が戦車をもってチベットの人々を血なまぐさい鎮圧に至ったことに対し、「この事件は中国政権の本質がいかに傲慢、横暴、独裁であるかを現している」と非難した。
陳総統は「3月14日は特別な日である。この日は、中国が再度チベットを血なまぐさい鎮圧に至った日であるだけでなく、『反国家分裂法』の制定から3周年の日である」と「反国家分裂法」にも言及し、「3年前に中国は『反国家分裂法』を制定し、武力で台湾を侵攻するための法的根拠の基礎とした。『反国家分裂法』は世界で史上初めて、世界で唯一、1つの国が武力戦争を発動する規定を法律条文に明文化したものであり、この法律が公表されると、世界は騒然となった。この法律を通過した中国に対して続々と制裁を加える動きが起こり、国際社会で相当大きな世論圧力が形成された」と語った。
陳総統は「ところが、思いもよらず台湾の野党の主席がその1ヶ月遅れで北京へ行き、中国とそれぞれ合意文書にサインし、中国にかかっていた圧力を緩和させた。合意文書には、台湾の果物を中国市場に開放することと、(中国が)台湾の世界保健機関(WHO)参加に協力することが謳われていた」と振り返った。
陳総統は「しかし合意から2ヶ月後に、中国はWHOと秘密の覚書を結んだ。台湾にもしSARS(新型肺炎)などのような重大な疫病が発生した場合、WHOは専門家を派遣して支援できるように定められたが、何を重大な疫病と判断するかは中国衛生署が決定し、中国の同意があってはじめて、WHOは専門家を台湾に派遣できるとした。このほか、台湾がもしWHO技術会議に参加する場合は、2ヶ月前までに申請する必要があり、しかも最後に中国衛生署が台湾の参加を裁決できるとしている。この覚書は台湾のWHO参加に協力するとした合意文書の内容にまったく違反しており、さらには台湾を実質的に中国の管轄区、中国の地方自治体に矮小化するものであった」と語り、中国が台湾の野党との約束を反故にしたことを批判した。
そのうえで、陳総統は「中国と平和協定を結べば台湾海峡の平和が確保できると主張する人もいるが、チベットの流血の事態からわれわれが理解できるのは、平和協定があるからといって、いったい何になるのかということである。中国は1951年にチベットと平和協定を結んだが、8年後の1959年3月10日に、武力でチベットを鎮圧した。49年後の3月、再び軍や警察が平和的なデモを武力で鎮圧した」と指摘した。
陳総統は「中国とチベットの間には平和協定が結ばれ、チベットを武力攻撃する合法性も法律で明文化されていないが、それでも、チベットは何回も武力鎮圧に遭っている。台湾は中国から1,300基以上ものミサイルの照準が向けられ、法律をもって武力侵攻を合法化する対象とされている。いったいどうして両岸が平和協定さえ結べば台湾海峡の平和が維持できると信じることができようか」と警戒を呼びかけた。
【総統府 2008年3月15日】