タイヤル族文化の消失を危惧、88歳の長老が文化財を絵と文字で紹介

　台湾北西部・苗栗県に住む先住民族タイヤル族の長老、簡雲生さんが新刊本の『卡義卜勇的空3－高熊峠（Matabalay）部落文物器皿記述』を出版した。「簡雲生」は中国語（漢語）名で、タイヤル族語の名前は「卡義卜勇」。「高熊峠」とは苗栗県泰安郷の栄安「部落」を指す。「部落」は先住民族の暮らす集落のことで、タイトルの意味は、「卡義卜勇の空3－栄安集落の器など文化財に関する記述」となる。

　簡雲生さんは過去に警察で30年間勤務し、泰安郷大興村の村長も経験。現在は栄安集落の「頭目」（リーダーのこと。村長）を務めている。今回、これまでの著作である『卡義卜勇的空－自述』と『卡義卜勇的空2－老頭目説故事』のスタイルを踏襲し、3作目の『卡義卜勇的空3－高熊峠（Matabalay）部落文物器皿記述』を出版した。

　簡雲生さんは今回、多くの人がタイヤル族の文化財をたくさん見て、たくさん説明を聞いてもその価値や使い方を理解できないこと、並びにタイヤル族の伝統的な文化が失われつつあることに危機感を抱き、それらを絵にして子孫たちに伝えていくことを思いついた。簡雲生さんはそれによって先祖たちの貴重な知恵を残していきたいと考えている。

　簡雲生さんは88歳。自身が高齢となったことから出版を決意し、これまでに集め、保管してきたタイヤル族の器などについて中国語とタイヤル族語で解説、さらに簡単なイラストを加えてそれぞれの由来と用途を説明した。簡雲生さんはこれにより、これらの重要な文化財に関する情報が広く伝わり、多くの人々がタイヤル族の生活形態を理解するよう願うと共に、タイヤル族の人たちが自らの伝統文化をいっそう重視してほしいと呼びかけている。

　『卡義卜勇的空3－高熊峠（Matabalay）部落文物器皿記述』は苗栗県の文化観光局、苗栗県立図書館及び同県の18郷・鎮・市の図書館にそれぞれ収蔵される他、同文化観光局行政科と書店の五南書局の販路を通じて一般に販売されるということ。

Taiwan Today：２０１８年１０月３０日

写真提供：左：苗栗県提供、中央社、右：中央社
　タイヤル族の長老、簡雲生さん（左）がタイヤル族の器などの文化財を文字とイラストで紹介する図書を発表。文化の普及と共に、先住民族が自らの文化を重視することを願っている。右はこのほど出版された書籍の1ページ。