蔡英文総統が『台湾関係法』立法40周年を前に米国の3つのシンクタンクとのビデオ会議に出席
蔡英文総統は4月9日夜(台湾時間)、米国ワシントンにある「戦略国際問題研究所」(CSIS)、「ブルッキングス研究所」(The Brookings Institution)、「ウィルソン・センター」(The Woodrow Wilson International Center for Scholars)の3つのシンクタンクの招請を受け、総統府とCSISをつなぐビデオ会議に出席した。
同会議は米国元国務副長官のリチャード・アーミテージ(Richard Armitage)氏がモデレーターを、CSIS上級副所長・日本部長のマイケル・グリーン(Michael Green)氏が議長を務め、蔡総統が基調講演を行った後、3つのシンクタンクの専門家らからの質問に答えた。
蔡総統の基調講演の要旨は以下の通り。
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40年前の4月10日に『台湾関係法』が成立し、台米関係の新しい1ページが開かれた。米国議会の強固な支持の下、『台湾関係法』は米国と台湾の協力の指導原則となった。
米国議会が立法により台湾の安全を保障することを堅持したことにより、台湾は最も暗黒な時期を乗り切ることができ、今日の自由で健全な民主社会となることができた。
『台湾関係法』は米国が我々と共に太平洋地域の平和と安全と安定を守ることを体現しているのみならず、同時に台湾の自主防御能力の発展を支え、いかなる形の脅迫にも対抗できるようにしている。
米国の歴代政府および国会は、この約束と支持を堅守してきた。1996年3月、クリントン政権は2隻の空母を台湾付近の海域に派遣し、台湾で初めての総統直接選挙を中国が妨害しようとすることを防いだ。その歴史的な瞬間に米国は台湾と同一線上に立ち、民主主義の価値を共有する約束を世界に示した。
台湾の人々もこれに応え、我々が民主主義の基本プロセスである選挙権を行使する決意を世界に向けて示し、我々が世界の自由民主国家の仲間に加わる能力があることを証明した。
1996年、我々は民主主義の大きな一歩を踏み出した。その20年後、台湾は世界で最も自由な国の一つとなり、台湾の人々は初めて女性の総統を選出した。
40年間の歴史を振り返れば、『台湾関係法』は「善の力」を構築し、台湾が世界の民主主義の灯台となる基礎を支えているといえる。
過去3年間、台米関係には顕著な進展があった。
まず、両国の協力は『台湾関係法』の精神を実践しており、米国の現政権は台湾への着実な武器売却を公表しており、同時にその他の計画も進められている。米国は台湾の武器国産能力の発展も支持しており、台米両国間の訓練および協力計画もますます緊密かつ強固になっている。
先月、台湾と米国は、「インド太平洋地域における民主ガバナンス協議」の対話プラットフォームを開設し、我々と理念の近い国とともに善良な統治と人権について協力しながら推進していく。
また、信教の自由についても、先月、台湾と米国は「インド太平洋地域における信教の自由を守る市民社会の対話」を共同開催し、世界の信教の自由が脅威を受けた際に、我々は共に声を上げ、あらゆる民族の信教の自由を守っていく。誰もが自己の信仰を理由に「再教育」の罰を受けるべきではない。
台米間の「グローバル協力訓練枠組み」(GCTF)は、女性のエンパワーメント、メディア・リテラシーなど、世界の切迫した問題に対する協力のよい手本である。最近日本が参加したことも我々は歓迎しており、インド太平洋地域のパートナーが共にこの枠組みを活用して共通する価値観および利益を促進していきたい。
また、台湾は米国の「海外私人投資社」(OPIC)と協力して、インド太平洋地域および台湾の国交国への投資機会を見い出そうとしている。これは1952年からすでに協力を始めていることであるが、『台湾関係法』においてもこの協力関係が盛り込まれている。我々は援助を受ける側からハイテク強国へと成長した。台湾は専門分野で米国とともに友人およびパートナーの経済発展を支援する能力を有している。
中国はいま、台湾の人々の国際参加の機会を潰そうとしている。彼らがそのようにするのは、今日の与党が民進党だからではなく、我々が『92年のコンセンサス』を承認しないからでもない。彼らは、台湾の人々が独自に国際実務に参加する権利がないと思っているのだ。
中国による両岸関係の良性発展を妨害する行為は、両岸の安定を損っている。
我々は、米国および理念の近い国々が台湾の国際社会における努力を継続的に支持してくれていることに深く感謝している。我々は米国が我が国と国交のある国に対して中国の影響力が及ばないよう尽力していることを見てきた。また、半年ごとの国際機関諮問会議においても、国際社会における台湾の貢献が前向きに評価され、ますます多くの理念の近い国々が国連専門機関への台湾の参加を支持してくれるようになった。
『台湾関係法』は、我々の共通利益を十分保障できる関係を構築することを望むものであり、共通の価値観を守る枠組みを提供するものである。世界情勢がますます複雑になり、課題が山積している今、その役割はますます重要になっている。
我々は前世紀の経験から、民主主義の進展は天から降って来るものではないことを学んだ。いま、世界各地の反自由民主勢力はますます過激になってきている。我々は個人の自由を進歩の指標にしているが、反対勢力は国内外で恐怖感を散布してコントロールしようとしている。
2週間も立たない前に、中国人民解放軍の戦闘機2機が台湾海峡の中間線を越えて来たのは、20数年来の平和と安定を維持する暗黙のルールを破壊するものだった。
ジョン・ボルトン(John Bolton)米国国家安全保障問題担当大統領補佐官は、「中国の軍事挑発で台湾の人々の心をつかむことはできない。世界各地の人々が民主主義を守る決意を強固にするだけだ。『台湾関係法』と我々の約束は極めて明確である」とツイートした。我々はこれに完全に同意する。
『台湾関係法』40周年にあたり、我々は台湾の人々が民主主義の信念を堅持し、今後も恐怖や脅迫を受けることのない生活を享受できるよう、より強固に守っていかなければならない。
『台湾関係法』の起草者は40年前にこのプロジェクトを始めたが、そのビジョンは、我々のこの地域が自由、開放的、民主的になったときに初めて達成される。
台湾はただ受け身なのではなく、その中に参加するパートナーでありたい。
この鍵となる瞬間に、『台湾関係法』の条文とその精神を長く守り、我々の共有する価値観により引き続きこの地域の未来を形作っていくことが最も重要である。
皆様の支持の下、我々は共に努力し、台湾は世界において欠くことのできない「善の力」であることを、引き続き全世界に呼びかけていきたい。
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蔡英文総統は、同ビデオ会議の基調講演後の質疑応答において、台日関係に関して、以下のように述べた。
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対日関係は我が国の重要な対外関係である。その理由の一つとして、台湾の人々は日本に対して極めて好感を持っている。日本は台湾からの最大の海外旅行先であり、台湾の第3の貿易パートナーである。政府は対日関係の深化に努めていく。
インド太平洋地域の協力については、対米関係に限定されるものではない。我々は日本ともインド太平洋のビジョンを共有したい。経済繁栄、クリーンなガバナンス、地域安全保障の協力などを共に促進したい。
日本の沼田幹夫・駐台代表が最近、インド太平洋の汚職防止に関する「グローバル協力訓練枠組み」(GCTF)に参加されたことは非常にうれしいことである。これは台、日、米3カ国が初めて共同主催した活動であり、今後もこのような活動が増えていくことを望んでいる。
我々は日本国際協力機構(JICA)とも協力できるよう努めている。同機構はインド太平洋地域での事業の現地での評判がよく、その多くは台湾と国交のある国である。
また、我々は台湾と日本の企業が共に投資およびビジネスプロジェクトを手がける機会を見い出そうと努力しており、これは「新南向政策」の一部分である。
これらの協力を今後も継続しながら、台湾がいかにインド太平洋地域でより多くの貢献を果たせるかを議論していきたい。
我々は台湾の国際参加の支持についても大きな進歩があった。日本の多くの政府関係者が世界保健機関(WHO)年次総会などの国際会議への台湾の参加を全力で支持していただいたことに感謝する。
我々は今後も引き続き、日本および理念の近い国とのパートナー関係を推進し、台湾がグローバル問題に貢献できる創意ある方法で取り組んでいきたい。
これらの行動は、台湾と理念の近い国との関係が大幅に進展したことを示している。米国とのパートナー関係を深めていくのと同様に、これらの進展は共通の利益と価値観に基づいている。台日関係は引き続き成長し、両国は強い信頼と友情で結ばれることと期待している。
【総統府 2019年4月9日】