2020年元日からさまざまな新制度がスタート
台湾では2020年1月1日より、最低賃金の引き上げなど様々な新制度がスタートした。主なものを以下にまとめた。
【労働者】
★最低賃金の引き上げ
最低賃金(月給)が従来の2万3,100台湾元(約8万3,600日本円)から2万3,800台湾元(約8万6,134日本円)に引き上げられた。全国183.26万人の本国人労働者がこの恩恵を受けることになる。時給は150台湾元(約542日本円)から158台湾元(約571日本円)に引き上げられた。本国人労働者約48.33万人がこの恩恵を受けると推定される。
★労働者保険加入者の退職金
「労工保険条例(=労働者保険条例)」の改正に合わせ、2020年より労働者保険加入者の退職金受給申請年齢を62歳に引き上げる(これまでは60歳)。1959年生まれの労働者保険加入者の場合、2021年にならなければ退職金を全額受け取ることができない。
★ソーシャルワーカーの給与体系確立
公的機関で働くソーシャルワーカーの最低賃金を最大3,000台湾元(約10,852日本円)引き上げることができるようになった。民間機関は、従来の定額補助方式に代えて、「勤務年数、学歴、免許の有無、リスク業務の有無」などの基準によって段階的に補助を引き上げる制度を確立する。雇用初年度の月給は最高4万4,892台湾元(約16万2,526日本円)となる。このソーシャルワーカー1万682人がこの恩恵を受ける。
★「労働事件法」の法律扶助拡大
「労働事件法」の民事訴訟制度に係る改正に合わせ、労働争議調停及び労働集団訴訟を法律扶助の範囲に加え、労働者の権益を保障する。
【生活】
★総合所得税新制度(5月の確定申告時から適用)
所得税の控除に「長期照顧特別扣除額(=長期介護特別控除額)」と「薪資核実減除方案(=日本の特定支出控除に類似)」が追加される。概算では約29万世帯と7万人が対象となる。
★国民年金
国民年金を構成する6項目(「老年年金給付加計金額」、「老年基本保障年金」、「遺族年金」、「身心障礙年金給付基本保障」、「身心障礙基本保障年金」、「原住民給付」)の基本保障金額(=最低受給額)が現行の3,628台湾元(約1万3,131日本円)より引き上げられる。実際の調整幅は2020年1月6日に行政院主計総処が発表する「消費者物価指数成長率」に基づいて算出される。
★託児補助
満2歳の幼児が引き続き「公共託育(=公立の託児施設)」や「準公共保母(=政府と契約するベビーシッター)」、「準公共託嬰中心(=政府と契約する民間託児施設)」に預ける場合、託児費用の補助を3歳未満まで延長する。補助の金額は家庭の経済条件に応じて異なり、「公共託育」が毎月3,000~7,000台湾元(約10,853~2万5,323日本円)、「準公共保母」あるいは「準公共託嬰中心」が毎月6,000~10,000万台湾元(約2万1,706~3万6,173日本円)となっている。
★海外の電子商取引業者による領収書のクラウド発行
台湾に営業拠点を持たない海外の電子商取引業者は一律、消費者に対して領収書をクラウド発行しなければならない。
★公共貸与権の試験導入
利用者が公立の図書館で書籍を借りる際、著者に対する補償として、政府が3台湾元(約10日本円)を作者及び出版業者に支払い、創作者の権益を保障する。国立台湾図書館(台湾北部・新北市中和区)及び国立公共資訊図書館(台湾中部・台中市)でまず3年間、試験導入する。
★119通報アプリ
簡易メッセージ付きの通報機能を持つアプリで、新たな119(救急・消防)通報の手段となる。通報と同時に位置情報をキャッチし、通報の受理に必要な時間(特に郊外や山岳救助の場合)を短縮することができる。聴覚障害者やろう者にも通報の手段を提供することにもなり、マイノリティーの権益を保障することになる。
★地震の震度階級を改訂
地震の震度と災害に影響との関連性を強化するため、従来1~5級としていた震度階級のうち、5級と6級を細分化し、5弱、5強、6弱、6強とした。震度と災害発生により高い関連性を持たせることで、災害救助や公共及び民間機関の地震対策に役立てる。
【医療】
★健康保険料の調整
最低賃金の引き上げに伴い、国民健康保険の保険料の第1級も、従来の2万3,100台湾元(約83,610日本円)から2万3,800台湾元(約86,143日本円)に引き上げられた。概算では台湾全土で326万人の保険料がこの影響を受ける。また、国の保険料収入は約16.6億台湾元(約60億日本円)増える。
★健康保険の平均被扶養家族数を引き下げ
少子化によって被保険者の実際の扶養家族数が減少していることを受け、「平均被扶養家族数」を従来の0.61人から0.58人に減らす。これにより、雇用主及び政府による保険料負担が減る。統計によると、台湾全土約90万人の雇用主がこれにより保険料負担が軽減される。雇用主の負担は年間30億台湾元(約108億日本円)、政府の負担は同17億台湾元(約61億日本円)減ることになる。一方、国の保険料収入は47億台湾元(約170億日本円)の減少となる。
★先住民族高齢者に対する義歯補助
満55歳以上の先住民族高齢者が、歯科医の判断で義歯を入れる治療を受けることになった場合、中・低所得者の認定を受けておらず、その他の政府機関に義歯補助を申請していない場合に限り、最高3万台湾元(約10万日本円)を補助する。約2,000人が恩恵を受ける見通し。
★遠隔診療の拡大
2018年10月30日、台湾南東部・台東医院成功分院と台湾南部・高雄長庚医院が開始した遠隔診療を、台湾東部・花蓮医院豊浜分院、台湾南部・屏東県の恒春旅遊医院、離島の澎湖医院、金門医院にまで拡大する。それぞれ高雄長庚医院や台北栄民総医院と協力し、遠隔診療による問診を行い、患者が地元にいながら医療サービスを受けられるようにする。
【交通】
★オートバイの買い替えに対する補助
2007年6月30日以前に出荷された古いオートバイを買い替える場合、環境保護署(日本の環境省に相当)が最高で5,000台湾元(約18,000日本円)を補助する。大型バイク以外の電動オートバイ・スクーター、電気(アシスト)自転車への買い替えは1台につき3,000台湾元(約10,844日本円)を補助する。
★電動オートバイ・スクーターの購入に対する補助
2020年度に電動オートバイ・スクーターを購入する場合、「重型等級」及び「軽型等級」の購入については1台当たり7,000台湾元(約25,300日本円)、「小型軽型等級」は1台当たり5,100台湾元(約18,435日本円)を補助する。このほか、台湾製コアバッテリーを搭載した車種を購入した場合は、さらに最高3,000台湾元(約10,844日本円)を補助する。
★古い旅客機の強制淘汰
26年以上使用してきた旅客機を強制的に淘汰する。
★大型車のビジョンアシストシステムを定期検査に加える
大型車は規定に合致したビジョンアシストシステムあるいは、(1)左右両側のサイドミラーと、車体の両側の映像を映し出せる車内モニター、(2)車両右側にアンダーミラーを設置し、車両右前方の側面にセンサーを設置する、(3)車両の周囲の映像を表示できる360℃ビュー・モニターシステム―のいずれか1つの装置を設置しなければならない。
★高速道路でのレッカー移動費用の算出方法改訂
高速道路でレッカー移動される車体の価値や、車高によって、費用の徴収基準を1,500~20,000台湾元(約5,427~72,390日本円)とする。車体によっては、レッカー移動の作業時に特殊な機材を使う必要があるため。車高は10㎝、12㎝、15㎝ごと、新車は200万台湾元(約723万日本円)、500万台湾元(約1,800万日本円)、1,000万台湾元(約3,600万日本円)、2,000万台湾元(約7,230万日本円)を基準とする。
★快速公路でのレッカー移動費用の算出方法改訂
快速公路における特約レッカーサービスの費用は高速道路に準じ、小型車と大型車の徴収基準を制定する。小型車のレッカー移動は10㎞以内であれば基本料1,500台湾元(約5,427日本円)を上限とする。大型・重型オートバイは2,400台湾元(約8,684日本円)とする。10㎞を超えた場合、1㎞ごとに50台湾元(約180日本円)を追加徴収する。大型車は車種のトン数によって、2,625~6,825台湾元(約9,500~2万4,700日本円)を基本料として徴収する。10㎞を超えた場合、1㎞ごとに55~85台湾元(約199~307日本円)を追加徴収する。
★硫黄分を含む燃料油の船舶輸送禁止
国際航路を運行する船舶で使用する燃料油は硫黄分濃度0.5%以下とする。これは海洋汚染防止条約(MARPOL条約)の規定に合わせたもので、大気中に排出される硫化物を減らし、大気の品質を守るのが狙い。
【産業】
★営業所得税の新制度(5月の確定申告時から適用)
「産業創新条例」のうち、スマート製造と5G(第5世代移動通信システム)への投資を減税の対象とする。
2018年以降の未処分利益に対する税率を10%から5%に引き下げる(今年5月の確定申告時には2019年度の未処分利益について適用)。
所得額50万台湾元以下の中小企業は、2019年度の営業所得税率を19%に引き上げる。
★農産品の初級加工工場の管理制度
農産品の生産から初級加工までを一元管理する制度を立ち上げる。農産品の初級加工工場が認定登録を獲得できるよう指導し、生産、加工、マーケティングを一元管理することで、農業の生産高を引き上げ、農産品の安全を強化する。
Taiwan Today:2020年1月2日
写真提供:外交部国際伝播司
台湾では2020年1月1日より、最低賃金の引き上げなど様々な新制度がスタートした。写真はバッテリー交換を行う電動スクーター。今年度、電動オートバイ・スクーターを購入する場合、政府の補助が受けられる。