日本統治時代の画家、陳澄波の全集全巻の出版が完了

　今年で没後75年を迎えた台湾の芸術家・陳澄波の18巻に及ぶ全集が12年かけてこのほどついに全巻の出版を終えた。孫の陳立栢氏は、全集の出版完了は陳澄波研究のスタートにすぎないとして今後の研究に期待を寄せた。

　陳澄波は1895年に生まれ、1926年に油絵『嘉義街外』で、台湾の画家として初めて日本の帝国美術展覧会（現在の日展）に入選、その見事な成績は日本統治時代における台湾の多くの画家を励ました。陳澄波はその後も数々の作品で帝国美術展覧会をはじめとする様々な美術展に入選した。また、創作活動のかたわら、台陽美術協会を組織して毎年美術展を開催、美術の普及に力を尽くした。

　1947年のはじめに228事件が起きると、陳澄波は台湾中南部・嘉義市の市民を代表して軍部との交渉に向かったが勾留されることとなり、3月25日に嘉義の駅前広場で公開銃殺に処された。享年53歳。この暗黒の歴史により、台湾において「陳澄波」の三文字を口にすることは長年のタブーとなった。一方で陳澄波の妻、張捷は余生をかけて夫の作品を守り抜いた。そして政治的に戒厳令が解かれるにつれて陳澄波の名はゆっくりと人々の視野に戻ってきたのである。

　『陳澄波全集』は張捷が保存して来た陳澄波の作品がもとになっているが、それ以外にも多くの芸術学者、歴史学者が共同で、陳澄波の各ジャンルの作品、手紙、写真、個人的なコレクションなどを12年かけて一つひとつ分析・研究したもので、陳澄波の印刷されたデータベースとして現時点で最も完全なものになっている。

　財団法人陳澄波文化基金会と芸術家出版社は23日午後、『陳澄波全集』発表記者会見を行った。文化部（日本の省レベル）の李永得部長（大臣）、嘉義市の黄敏恵市長、台湾の最高学術研究機関・中央研究院の翁啓恵元院長、『陳澄波全集』の筆頭著者である蕭瓊瑞氏、陳立栢氏らが一堂に会し、歴史的な瞬間に立ち会った。

　李文化部長は、『陳澄波全集』が出版されて台湾及び全世界の人々に共有されることは重要なマイルストーンであり貢献だとその意義を強調した。

Taiwan Today：２０２２年３月２４日

写真提供：聯合報より
　今年で没後75年の芸術家・陳澄波の18巻に及ぶ全集が12年かけてついに全巻の出版を終えた。孫の陳立栢氏は、これは陳澄波研究のスタートだとして今後の研究に期待を寄せた。写真は記者会見の様子。中央が李永得文化部長、右隣が陳立栢氏。