多様な気候アクションでしっかりと地球を守ろう
行政院環境保護署長 李應元
気候変動はすでに科学的事実となっており、しかも実際に深刻な影響を地球のさまざまな場所にもたらし、人類の健康、生存環境、社会経済の持続可能な発展の脅威となっている。台湾は今年6月上旬に、強い梅雨前線の影響を受け、台湾北部の新北市三芝区ではわずか9時間で降った雨量が615ミリに達し、台湾南部の高雄市の山間部の積算雨量は1,446ミリに達した。7月末には2つの台風(9号、10号)が続けて襲来し、台湾の南端、屏東県佳冬郷では3日間の積算雨量が690ミリに達し、記録的な「短時間豪雨」が深刻な被害と損失をもたらした。さらに8月の台北市は37度を上回る熱波が集中して出現し、高温日数はこの百年来の記録を更新した。国際的な科学レポートでも昨年の地球は歴史上最も温暖な一年であったとされ、これらはいずれも異常気象の明確な事例である。このような気候変動の脅威が迫っていることに対し、我々は過剰な悲観や心配をするばかりではなく、実際に行動を起こすことで、危機を転機に変えていくチャンスにしたい。地球の健康は、つまり我々の健康に直結するのだから。
台湾は四方を海に囲まれた海洋国家であり、気候変動によりもたらされる脅威は直接的かつ深刻である。我が国は気候変動グローバル・アクションに呼応し、「温室効果ガス削減及び管理法」(以下、温管法)の規範に基づき、「国家気候変動対応行動綱領」を制定して緩和と適応の基本的方向性を示し、「温室効果ガス削減推進プラン」およびエネルギー、製造、運輸、住居・ビジネス、農業、環境など6つの部門からなる「温室効果ガス排出コントロール行動プラン」を提案し、200を超える推進方法で、政府省庁の枠組みを超えて温室効果ガス排出量削減を共に推進し、5年を1期として定期的チェックを行うことにより効果的に管理する。
クリーンなエネルギーの発電構造と大気の質改善を実現するために、台湾は2025年に再生可能エネルギーによる発電量の割合を20%まで引き上げ、低炭素天然ガス発電を50%とし、石炭火力発電を30%まで下げていくことを目標としている。電気事業法改正によりグリーン電力の発展が促進され、「エネルギー発展綱領」および市民の参加を通じて「エネルギー転換白書」をまとめることにより、エネルギー構造転換を推進し、エネルギーの持続可能な発展を実現していく。同時に融資、投資、資金集めのパイプと人材育成などの分野から、グリーン金融行動プランを積極的に推進し、金融を呼び水としてグリーンエネルギー・テクノロジー産業の発展への支持を強化していく。これらを踏まえ、台湾の気候変動対応能力の構築を全面的に向上させ、「パリ条約」が奨励する各国の低炭素化への積極的な取り組みの主軸に合致するよう、温管法では2050年に温室効果ガスの排出量を2005年の排出量の50%以下に抑える長期的目標の達成を目指している。
これまでは経済の発展ばかりを追い求め、化石エネルギーや天然資源を無制限に大量使用してきたために、その代価は気候変動の衝撃のみにとどまらず、大量の廃棄物を生み出し、深刻な環境破壊となった。台湾は長年の努力を経て、資源回収とゴミ削減に取り組み、世界からも注目されている。米紙「ウォール・ストリート・ジャーナル」の2016年5月には「台湾はゴミ処理の天才」と報道され、台湾はかつてはゴミの島などと呼ばれたこともあったが、今では資源回収の優等生となったのだ。台湾は近年、廃棄物の資源化、産業バリュー・チェーン、循環経済特区の開設、循環産業への構造転換を目指すビジネスチャンスなど世界でトップ3に入る資源回収を基礎とした循環経済を推進している。2022年には台湾は全面的にアジアの循環経済ホットスポットを確立し、我々の経済は健全なエネルギーを得て、持続的な成長を資源の損失から切り離すことにより、着実に地球の持続可能な発展のためのグリーン循環経済への道を歩んでいくことができるようにしていきたい。
ローマ法王をはじめとする世界の多くの指導者が、気候変動によりもたらされる脅威を重視するよう呼びかけている。蔡英文総統も、気候変動を食い止め、地球を脅威から守ることに、台湾も欠席しないと述べている。なぜなら、これは子孫の世代に関わる持続可能な環境にとり最も重要なことだからであり、我々の立場は後退することはない。長きにわたり、台湾は二国間協定および多国間協定を通して、黙々と地球市民の役割を果たすよう努めてきた。我々は世界と共に気候変動に対処していくことを望んでおり、台湾が取り組む環境保護への努力と経験を分かち合いたい。これらの経験を国際社会やそれを必要とする国にフィードバックし、グリーン生活を実践し、グリーン産業およびグリーン雇用の創造者となりえることを願っている。