陳建仁副総統がフランス『La Croix』紙のインタビューで政府の政策を語る
陳建仁副総統は2月10日にフランス『La Croix』紙のインタビューに応じ、カトリックの信仰、両岸関係、台米関係、同性結婚、少子高齢化、ひまわり学生運動などのテーマについて語った。以下はその要旨である。
――カトリック信仰について
中華民国(台湾)政府はいかなる宗教に対しても中立であり、国民にいかなる宗教の信仰を強制することもなく、信仰を抑圧することもない。宗教の自由の保障と宗教の平等を守ることは、政府が極めて重視しているところである。カトリック教徒は台湾では少数派であるが、カトリック教徒の私が第14代副総統に当選できたことは、台湾の政教分離と多様な信仰の尊重が成熟していることを示している。
――台米関係について
就任して間もないトランプ米国大統領のアジア太平洋政策は、まだ明確になっていないが、トランプ政権内の多くの政府幹部は我が国に極めて友好的であり、台米間のさらなる緊密かつ良好な関係を築いていけると信じている。最近では、ティラーソン国務長官が台湾に対する約束を改めて表明したように、歴代米国政府の長きにわたる台湾への支持と協力に感謝している。対米関係と両岸関係について、我々はいずれも同等に重視しており、良好な関係が維持できるよう努力していく。
――両岸関係について
昨年5月20日(総統・副総統の就任日)以来、中国大陸は「一つの中国」を枠組みとする「1992年のコンセンサス」を両岸関係の発展の前提条件とし、一方的に両岸の意思疎通メカニズムを中断し、双方の交流を制限し、台湾の国際空間を圧迫し、台湾海峡周辺で軍事訓練を行うなど、台湾への圧力を強めているが、両岸の良性的な交流の妨げにしかならない。
蔡総統は就任以来、地域の平和に力を入れており、両岸の安定を維持する政策は明確かつ一致している。1992年の両岸会談の歴史的事実および既存の政治的基礎を尊重し、「中華民国憲法」と「両岸人民関係条例」およびその他関連法律に基づき両岸の実務を処理することを何度も表明しており、引き続き最大の善意を示し、両岸の平和と安定発展の維持に努めていく。
台湾海峡の平和を維持することは双方の共通目標であり責任でもある。中国大陸は対話と意思疎通を通して意見の対立を緩和すべきであり、ネガティブな対立的行動を採るべきではない。両岸の良性的な交流の発展を共に考えていけば、台湾海峡の平和は期待できるものとなると信じている。
――両岸・対外貿易と国内投資について
両岸の経済・貿易関係は台湾の対外貿易の重要な一環であるが、単一市場への過度な依存は避けるべきであり、それは全世界のどの国も同様である。我々は日本、米国、欧州連合との経済連携や自由貿易関係を強化していくと同時に、「新南向政策」を打ち出し、台湾企業の多様な展開と投資をサポートし、中国大陸の経済リスクの影響を分散させていく。
台湾では最近、電業法改正法案が可決した。これにより2025年に原発ゼロの目標を達成し、20%がグリーンエネルギーとなる。政府が大量の資金を投入し、風力発電や太陽光発電を建設するほか、国内外からの投資も誘致する。したがって、内需の強化は台湾の経済発展における重要な一部を占めることになる。
また、台湾はイノベーションを基礎とする経済発展のモデルを構築し、海外から資金、人材、技術を取り入れ、台湾との協力による新経済を発展させていく。特に、バイオ医療、グリーンエネルギー、IoT(モノのインターネット)、スマート機械、国防産業、新農業と循環経済など、さまざまな分野の研究開発産業を発展させ、外資を誘致し、投資を多様化させていく。
――同性結婚について
同性愛者の人権は保障されるべきである。この問題はすぐ簡単に解決できるものではなく、全世界では23カ国が同性結婚を承認し、15カ国が同性伴侶関係を承認しているが、人権のほか義務および財産、同居、子女扶養など必ず処理しなければならない権利問題がある。最も重要なことは、賛成派と反対派が同じテーブルに就き、よく話し合い、意見を述べ合うことである。同性愛者の人権を保障すると同時に、台湾の婚姻および家庭制度も考慮しなければならない。我々はあらゆる人権の法的保障が守られるよう努力していく。
――少子高齢化について
現在、一人しか子どもを生まない夫婦が増え、生育率が下がっているのは法律がもたらしたものではなく、社会や経済の変化の結果である。私は、政府が養育や幼児教育のサポートを提供することなどを通して、この状況を改善できると考えている。子どもの養育にはお金がかかることから、政府がより一層財務的にサポートし、整った社会システムを構築し、幼児・児童の養育を支援していく必要がある。
――ひまわり学生運動について
台湾は自由、民主主義、開かれた国であり、人々は政府が法律や協定を可決する前には公開の議論と国民の参加を希望しており、これは重要である。若者世代がこのような運動(2014年に両岸サービス貿易協議の立法院審議の手続きが不当だとして抗議し、立法院を占拠した学生運動)を起こしたことは、若者が国政に関心を持ち、国を愛していることの表れであり、ひまわり学運は若者による民主運動のモデルとなったと考えている。香港、マカオ、中国大陸の多くの人々が台湾を華人社会の自由民主の模範と見ており、東南アジアの国会議員も台湾の民主制度の発展は東南アジアの国々の模範となると述べた。民主主義は世界共通の価値観であると信じている。
【総統府 2017年2月14日】