第4回タン・プライズ「バイオ・医薬賞」は日本の岸本忠三氏を含む科学者3名に
「東洋のノーベル賞」を目指す「唐奨(タン・プライズ、Tang Prize)」の運営団体は19日、第4回タン・プライズ「バイオ・医薬賞」を米コロラド大学のチャールズ・ディナレロ(Charles Dinarello)教授、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの岸本忠三特任教授、英オックスフォード大学のマーク・フェルドマン(Marc Feldmann)教授の3人に贈ると発表した。
ニュースリリースによると、岸本忠三特任教授は受賞に際して「長年の友人であるマーク・フェルドマン教授、チャールズ・ディナレロ教授と共同受賞できたこと、そして半世紀にわたる非常に基礎的な研究が医学に対して貢献できたこと、ひいてはそれが世界で拡大する新型コロナウイルス感染症の治療にとって新たな希望となっていることを嬉しく思う」とコメントを寄せた。
自己炎症性疾患を治療する薬物は、新型コロナウイルスとも関係があるとされている。新型コロナウイルスに感染した患者の多くは、免疫系細胞からサイトカインと呼ばれる活性物質が大量に分泌される。しかし、これが暴走すると過度な炎症反応が生じ、自分の健康な細胞まで攻撃し、臓器組織に重大な障害を与える可能性がある。いわゆる「サイトカインストーム」と呼ばれる免疫系の暴走であり、深刻な場合は命を落とすこともある。
免疫系細胞が自分を攻撃し、深刻な合併症などを引き起こし、ひいては命を失うことにもなりかねない「サイトカインストーム」が発生するのは、新型コロナウイルス感染症に限ったことではない。総人口の5~10%は、例えば関節リウマチや乾癬などで日常生活に支障をきたしている。
今回の受賞者3人はそれぞれ、サイトカインの一種である腫瘍壊死因子(TNF)、インターロイキン1(IL-1)、インターロイキン6(IL-6)と炎症反応との関連性を発見した。これらの3つを抑えるバイオ医薬品は、現在多くの自己炎症性疾患にとって必要不可欠なものとなっている。
そのうちマーク・フェルドマン教授が発見したTNFは、主に免疫反応を調節する機能を持つ。マーク・フェルドマン教授は当時、免疫バランスが崩れた自己免疫疾患、特に多くの患者に影響を与えている疾患の一つである関節リウマチに関心を持った。そして、痛みがある関節部分で異常な量のサイトカインが分泌されており、その中心がTNFであることを発見した。
マーク・フェルドマン教授は製薬会社と協力し、「抗TNF抗体」が関節リウマチの患者の治療に有効であることを治験によって証明した。この疾患によって生活能力を失っていた患者が人生に再び希望を見出せるようになり、自己免疫疾患や炎症性疾患の治療にとって大きな第一歩となった。
チャールズ・ディナレロ教授が発見したインターロイキン1(IL-1) は、サイトカインの一種であるインターロイキンの中でも最初に同定された分子で、自己免疫や炎症反応に深く関与している。チャールズ・ディナレロ教授が発見・純化し、クローニングした最初のインターロイキンだ。さらに、インターロイキン-1β(IL-1β)の発見はサイトカイン研究の基礎を作った。
なお、その後、別の科学者がIL-1受容体拮抗たんぱく質「IL-1Ra」によって、インターロイキン1(IL-1)の生物学的活性を抑制できることを発見した。
インターロイキン1(IL-1)は発熱や炎症性疾患に深く関与していることが分かっている。このため、インターロイキン1(IL-1)を標的とした治療の新方向がいくつも生み出され、チャールズ・ディナレロ教授のサイトカイン及び炎症性疾患の病因への貢献が証明されている。
大阪大学の岸本忠三特任教授が発見したインターロイキン-6(IL-6)は抗体産生を誘導するサイトカインだ。岸本忠三特任教授はこれを純化し、その後、インターロイキン-6(IL-6)及びその受容体のクローニングに成功した。
その後、開発された抗 IL-6 受容体抗体は大規模な臨床実験の結果、複数の自己免疫疾患の治療に有効であることが証明された。それには関節リウマチや若年性特発性関節炎も含まれる。
受賞者発表の記者会見を行った中央研究院(台湾北部・台北市南港区)の劉扶東副院長によると、この3人がこれらのサイトカインを発見したのは数十年前のことだが、そこから生まれた発見や製材は現在でも大きな影響力を持っている。また、これら3つのサイトカインを標的にしたバイオ製剤はサイトカインの活性を抑えることができることから、新型コロナウイルスが世界でまん延する中、注目の研究対象となっている。一部は新型コロナウイルス感染で引き起こされる「サイトカインストーム」を抑える効果が確認されており、新型コロナウイルスによる重症肺炎治療に希望の光を与えている。
Taiwan Today:2020年6月20日
写真提供:中央社
「東洋のノーベル賞」を目指す「唐奨(タン・プライズ)」の運営団体は19日、第4回タン・プライズ「バイオ・医薬賞」を米コロラド大学のチャールズ・ディナレロ(Charles Dinarello)教授、大阪大学免疫学フロンティア研究センターの岸本忠三特任教授、英オックスフォード大学のマーク・フェルドマン(Marc Feldmann)教授の3人に贈ると発表した。写真左は中央研究院の劉扶東副院長。