馬英九総統が天安門事件26周年に関する談話を発表
馬英九総統は6月4日、「六四・天安門事件」26周年に関する談話を発表した。以下はその全文である。
「六四」26周年の談話―歴史を直視し、痛みを越えて、未来を創造する
今年は「六四・天安門事件」26周年であり、抗日戦争勝利70周年でもある。この2つの重大な事件は、われわれに同じ教訓を与えてくれた。国内外を問わず、政治指導者は傷の痛みから逃げず、勇敢に歴史に向き合い、その痛みを思い起こさなければならない。このようにして初めて暗いもやの中から抜け出し、未来に向かうことができるのである。今日は、私が総統として発表する最後の「六四」談話であり、大陸当局に対して、歴史を直視し、傷の痛みを越えて、さらなる対話の基礎のある共通の未来を創造するよう呼びかけたい。
30年前に、台湾が強権体制から民主主義への向かった経験が証明するように、政治改革には陣痛がともなうかもしれないが、災難がもたらされるわけではなく、逆に国家が新たに生まれ変わる契機となるものである。経済改革と政治改革は、鳥の両翼であり、互いに補完し合うものであり、どちらかが欠けても高く飛ぶことはできない。過去30年間の大陸の経済改革の成功は著しく、振り返って見れば、当時の改革者でも今日のような成果は絶対に想像できなかったに違いない。改革開放は災難をもたらさなかったのみならず、中国大陸は世界第2位の経済体となり、人々の生活水準も著しく向上した。しかしながら、政治改革の歩みは相対的に緩慢であり、国際社会の大陸の人権に対する印象は、「六四」で止まったままであり、これらは両岸関係を今後より一層拡大、深化させることを望む人にとり、失望を禁じ得ない。
民国97年(2008年)に私が総統に就任して以来、中華民国憲法の枠組みの下、「92年のコンセンサス、『一つの中国』の解釈を各自表明する」を基礎として、両岸の「統一せず、独立せず、武力行使せず」の政策を維持し、台湾海峡両岸の「平和と繁栄」の現状を確立することに成功した。しかしながら、両岸の制度には巨大な差異が存在し、両岸の人々の心理的な距離もかなりある。大陸の指導者である習近平氏も「両岸の人々は『心の通い合い』ができなければならない」と述べており、心理的な距離を縮め、心の通い合いを達成するためには、「平和と繁栄」は必要条件に過ぎず、十分条件を満たすには大陸が民主化改革の推進に取り組んでこそ初めて達成できるのである。
昨年の双十国慶節の演説で私は、大陸が政治改革を推進する際、反体制派を包容する民主的価値観を構築し、大陸の特色ある民主化の道筋を一歩ずつ推進するよう呼びかけた。意見の相違を容認することは舶来品(西洋から来た価値観)などではない。中国の春秋時代に子産は、郷校を壊すことをせず、人々の政府への批判を容認したことにより、当時の人々から称賛された。我々はこの7年間の努力により、「92年のコンセンサス」を堅持することは、両岸関係を未来に発展させるための共通の基礎となっている。大陸側が民主主義を深化させる道筋をさらに踏み込んで進めるならば、我々は、これが両岸が今後さらに深く話し合う共通の基礎となると考えている。
7年前の5月20日、私は総統就任演説で、「我々は大陸13億人の同胞の福祉に心から関心を寄せており、中国大陸が継続して自由、民主主義、富の均等の道のりを歩み、両岸関係の末永い平和発展のために、ウィンウィンの歴史的条件を創出することを願っている」と述べた。「六四」の名誉回復は、両岸のウィンウィンを創出する重要な歴史的条件の一つである。歴史に向き合い、特に「六四・天安門事件」に向き合うことは、このような共通の基礎をより強固にするものと我々は考えている。
同様に、我々も毎年台湾で、民国36年(1947年)に発生した「二二八事件」および民国40(1950)年代の「白色テロ」の時期について一様に反省している。いかなる政府も歴史の傷の痛みに向き合い、事実に基づいて論じなければならず、遺族の痛みにはよりその気持ちに寄り添うことが必要である。我々は、大陸当局が「六四・天安門事件」に向き合うことを望むものであり、悲劇を絶対に繰り返さないことと、「六四」の名誉回復のために行動し、受難者および遺族が受けた傷の痛みを積極的にいたわるべきである。このように行動することは、必ず台湾に対してもきわめてプラスの作用をもたらし、双方の心理的距離を縮めることになる。両岸の相互協力はより安定し、より豊かな共通の基礎となり、次世代のより一層発展性のある未来を創出することができるのである。
【総統府 2015年6月4日】